
問い合わせフォームには、サービス相談や見積もり依頼と並んで、売り込みや採用、人材紹介、メディア営業など、営業目的の連絡が数多く届きます。このような営業連絡が混ざったままだと、データの精度が下がってしまいます。その結果、確認作業に手間がかかったり、不要なマーケティングコンタクトとして課金が増えてしまったりする点も課題です。
本記事では、HubSpotのBreezeデータエージェントを活用し、問い合わせが営業目的かどうかを自動で判定する方法を紹介します。
実際に、弊社FLUEDで実際の問い合わせデータを使ったテストを実施して、自動判定の結果をまとめました。使用したプロンプトやワークフローの作り方、運用時のポイントも解説しているので、ご参照ください。
「問い合わせフォームに営業メールが混ざっていて困る」「HubSpotで自動で仕分けたい」という方は、ぜひお読みください!本記事の内容は、動画でも分かりやすく解説しています。
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コンテンツ目次
HubSpotのBreezeデータエージェントで「問い合わせ営業かどうか自動判定」ができる

Breezeデータエージェントは、HubSpotが提供するエージェント型AI機能のひとつです。従来のように分析や提案を実施するだけのAIとは異なり、実際の業務を代行してくれます。
例えば、問い合わせフォームから送られてきた文章を読み取り、「営業目的かどうか」を判断可能です。その判定結果を、指定したプロパティに自動で書き込むことができます。
Breezeデータエージェントを使うには、HubSpotクレジットが必要です。問い合わせの判定には1回あたり10クレジットが消費され、金額にすると1回あたり約12円かかります。
Professional以上のHubSpotプランを利用している場合は、毎月3,000クレジットが付与されています。月に約300件分の問い合わせ判定であれば、追加費用はかかりません。もしクレジットが足りなくなった場合も、必要に応じて追加購入ができるので、まずは付与されているクレジットの範囲で、小さく試してみるとよいでしょう。
Breezeデータエージェントは、HubSpotのワークフロー内でアクションとして設定可能です。
今回紹介している「問い合わせ営業の自動判定」でも、フォーム送信をきっかけにワークフローを動かし、AIに判定を任せる仕組みを作っています。一度設定しておけば、問い合わせ内容を人力で1件ずつ確認する手間を大きく減らせます。
Breezeの機能や活用方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
>>HubSpotでAIを活用する方法を解説|Breezeの主要機能と外部AIツールの連携
HubSpotのBreezeデータエージェントで問い合わせ営業かを自動判定するメリット

HubSpotのBreezeデータエージェントを活用し、フォームに届いた問い合わせが営業目的かどうかを自動判定するメリットは以下の通りです。
- フォーム経由の営業メールを自動で対象顧客外にできる
- 数字とコストを正確に把握できる
- 人力での判定による工数・ミスを減らせる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
フォーム経由の営業メールを自動で対象顧客外にできる
問い合わせフォームには、商品やサービスの売り込み、人材紹介、メディア掲載や広告の提案など、さまざまな営業メールが送られてきます。営業目的の問い合わせは件数が多く、メールBOXが荒れて重要な連絡が埋もれてしまう原因にもなります。その仕分けや内容確認だけでも手間がかかり、本来の業務の妨げになることも少なくありません。
Breezeデータエージェントで営業かどうかを自動判定すれば、営業メールをあらかじめ対象外として扱うことができます。本来対応すべきサービス相談や見積もり依頼だけに集中できるため、問い合わせ対応の質とスピードの向上が可能です。
数字とコストを正確に把握できる
営業メールを分析対象から除外できると、コンバージョン数や問い合わせ数を正確に把握しやすくなります。施策本来の成果を可視化できるため、正確なデータをもとに、次の施策につなげましょう。
また、HubSpotでは営業目的の問い合わせであってもマーケティングコンタクトとして課金対象になる場合があります。問い合わせ営業を自動で判別し、適切に除外することで、データの精度を保ちながら、不要なコストの増加を防ぐのも重要です。
人力での判定による工数・ミスを減らせる
問い合わせ内容を1件ずつ目視で確認し、営業かどうかを判断する作業は、担当者の負担になりがちです。忙しい中で対応すると、見落としや判断ミスが起きる恐れがあります。
「どこまでを営業とみなすか?」という基準が担当者ごとに異なると、判断が属人化してしまいます。Breezeデータエージェントを使って判定ルールを統一し、工数を削減しつつ、安定した基準で問い合わせを分類するのがおすすめです。
こうした背景から、FLUEDとクライアント企業の両方で「問い合わせ営業をAIで自動判定できないか?」というニーズが高まっていました。そこで、Breezeデータエージェントを活用した判定の仕組みを考えたので、このまま読み進めてください!
HubSpotのフォーム営業を自動判定してみた!手順を解説

実際にHubSpotのBreezeデータエージェントを使って、フォーム経由の問い合わせが営業かどうかを自動判定した手順を紹介します。
ワークフローの全体像

全体の流れは「問い合わせフォーム送信 → AIによる判定 → プロパティ更新」という形です。フォームから問い合わせが送信されると、その内容をBreezeデータエージェントが読み取り、営業目的かどうかを自動で判定します。

HubSpot上では、問い合わせフォームの送信をトリガーとしてワークフローを起動します。問い合わせ内容のプロパティに値が入ったタイミングで、AIに判定を指示し、結果をカスタムプロパティに書き込む仕組みです。
判定結果は以下のように出力します。
- 営業目的の場合は「はい」
- 通常の問い合わせの場合は「いいえ」
- 判断が難しい場合は「判別不可」
判定後、結果をもとに分岐処理をします。例えば、営業と判定されたものは通知対象から外す、マーケティングコンタクトから除外するといった処理が可能です。フラグを付与し、後から目視で確認するといった運用もできます。
>>事例で学ぶ!HubSpotワークフローでできること&作成手順ガイド
使用したプロンプト
今回使用したプロンプトは以下です。
| 以下のテキストは、コーポレートサイトの問い合わせフォームから送信された内容です。 この内容が「営業・募集・勧誘・広報目的の連絡」か、「弊社サービスに関する通常のお問い合わせ」かを判定してください。 【出力ルール】 – 営業・募集・勧誘・広報目的の連絡 → 「はい」 – 通常のお問い合わせ(弊社サービスに関する依頼・質問・見積など) → 「いいえ」 – 内容が短すぎる、曖昧、判断困難な場合 → 「判別不可」 ※出力は「はい」「いいえ」「判別不可」のいずれかのみ。 — 【判定の優先順位】 1:通常のお問い合わせ(「いいえ」) 次のような場合は営業ではありません。 – 弊社サービス・支援内容・料金・導入・相談などへの問い合わせ – 弊社サービスを利用・検討・依頼する目的で送られているもの 例:「サービスについて相談したい」「見積をお願いしたい」「導入を検討しています」 2:営業・募集・勧誘・広報目的の連絡(「はい」) 以下のいずれかに該当する場合はすべて「はい」。 – 自社の商品・サービス・ツール・メディアの紹介や提案 – 広告掲載・有償メディア取材・掲載依頼・講演依頼 – 協業・提携・パートナーシップ提案 – フリーランス・副業・業務委託希望などの個人営業連絡 – 採用支援・人材紹介・求人掲載などのリクルーティング関連提案 – 「貴社にご提案」「弊社のサービス紹介」「お力になれる」「資料を送付したい」など営業文特有の言葉を含む場合 3:判別不能(「判別不可」) – 意味が曖昧、またはスパムのような内容の場合。 — 【参考:弊社事業内容】 BtoBマーケティング/営業DXに特化した専門家集団として、以下を支援: – ABMターゲット定義 / リスト作成 – CRM / MA / SFA設計・構築・運用 – WEB制作 / 広告運用 / コンテンツ制作 – インサイドセールス代行 / 営業研修 / 展示会支援 など — 【問い合わせ内容】 {{ enrolled_object.inquiry_content }} |
設計時に意識したポイントがいくつかあります。
まず、入力にはHubSpotの「問い合わせ内容」プロパティを指定しています。フォーム送信時に保存された問い合わせ内容を、そのままBreezeデータエージェントへの入力として渡し、AIに判定させる形です。
出力については、下記の3択のみに限定し、判定結果がブレないようにしました。
- 「はい」
- 「いいえ」
- 「判別不可」
また、判定の優先順位をあらかじめ明示している点もポイントです。具体的には、弊社サービスに関する導入相談や料金、見積もり、依頼といった内容は「通常問い合わせ」として「いいえ」に分類します。一方で、自社サービスの売り込みや採用支援、メディア営業、協業提案などは営業目的とみなし「はい」と判定します。
内容が極端に短い場合や意味が取りにくい場合は、無理に分類せず「判別不可」とするルールとしました。このように判定基準を明確にプロンプトへ落とし込むことで、実運用でも安定した判定ができるようになっています。
プロンプト内でFLUEDの事業内容も説明し「どのような内容なら通常問い合わせなのか」をAIに理解させたことで、精度が向上しました。自社でも試してみたい方は、ぜひFLUEDまでお気軽にご相談ください!
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HubSpotフォーム経由の問い合わせを自動分類した結果

今回は、FLUEDに直近で届いた問い合わせ約130件を対象に、Breezeデータエージェントによる自動判定をテストしました。結果は、以下の通りです。
| 通常問い合わせ | 23件 |
| 営業 | 105件(うち2件が誤判定) |
| 判別不可 | 4件 |
結論から言うと、営業かどうかの判定は9割以上の精度でできました。誤判定はごく少数にとどまり、実際に試してみて「いい感じだな」と感じられるレベルで使える、という手応えがあります。
営業と判定された105件のうち、誤判定は2件のみでした。1件は文章が極端に短く、判断に必要な情報がほとんど含まれていないケースです。もう1件はパートナー提案のように文脈がやや複雑で、営業とも通常問い合わせとも取りにくい内容でした。
このように、情報量が少ない問い合わせについては、どうしても判定が難しくなります。そのため「判別不可」という選択肢を用意し、無理に分類しない設計にしておくことが重要だと感じました。
また、営業とみなす範囲は会社ごとに異なるため、プロンプトのカスタマイズは必須です。例えば、採用や協業に関する問い合わせを営業として扱うかどうかは、事業内容や方針によって判断が分かれます。自社の状況に合わせて判定基準を調整することで、より実用的な運用が可能です。
このように運用すると、毎日溜まっていく問い合わせの中から、担当者が読むべき内容だけを素早く把握できるようになります。結果、レポート上の「問い合わせ数」や「商談化率」も、実態に近い形で把握しやすくなります。
まずは十分かな!と思う精度までチューニングすることができました。会社の事業内容などは個別にチューニングしたほうが良さそうなので、やってみたい方はぜひご相談くださいね。
問い合わせ営業と判定された後の対処法

問い合わせが「営業」と判定できても、後続対応が整理されていなければ、業務効率はあまり改善されません。対応の例としては、次のようなものがあります。
- マーケティングコンタクトの対象外にして課金を抑える
- Slack通知・タスクアサインを最適化する
- 送信禁止ドメインや専用ビューで管理をする
では、それぞれの施策が具体的にどのような設定で実現できるのか、現場で使える実践的なフローを掘り下げていきましょう。
マーケティングコンタクト対象外にして課金を抑える
営業と判定されたコンタクトに対しては、マーケティングコンタクトのステータスを自動で「対象外」に変更する運用がおすすめです。HubSpotの月額課金において、不要なマーケティングコンタクトが増えるのを防止できます。
例えば、Marketing Hub Professional では、月額料金に含まれるマーケティングコンタクト数は 2,000 件までです。この上限を超えると、5,000件単位で追加枠の購入が必要になり、1ブロックあたり月額30,000円の費用が発生します。営業目的の問い合わせをマーケティングコンタクトとしてカウントし続けると、気づかないうちに上限を超え、課金が増えてしまうことがあります。
特に、展示会やキャンペーン後など、一時的に問い合わせ数が増えるタイミングで自動化フローは効果的です。営業目的の問い合わせを早い段階で除外できるため、コストを抑えつつ、データの精度も維持しやすくなります。
>>HubSpotのマーケティングコンタクトとは?料金についても解説
Slack通知・タスクアサインを最適化する
問い合わせ内容に応じた通知やタスクの出し分けも可能です。通常の問い合わせと判定された場合のみ、営業チームにSlack通知を送り、自動でタスクを作成して担当者をアサインするといった運用もあります。
一方で、営業と判定された問い合わせについては、通知を行わない、もしくは別のSlackチャンネルにまとめて流すといった対応ができます。必要に応じて、営業お断り用のテンプレートを使って対応し、現場の負担を最小限に抑えるのもおすすめです。
>>HubSpotとSlackの連携方法を徹底解説!5つの通知機能で業務効率化
送信禁止ドメインや専用ビューで管理をする
繰り返し営業メールを送ってくるドメインについては、一覧で管理し、フォーム送信禁止ドメインとして登録する運用も検討できます。すべてのケースに適用する必要はありませんが、明らかに不要な営業が多い場合には有効な手段です。
「営業判定リスト」のような専用ビューを作成し、営業メールだけを一覧で確認できるようにしておくのもおすすめです。月次などのタイミングで見直しや整理を行うことで、問い合わせ管理をよりスムーズにできます。
>>HubSpotのフォームに入力制限を設ける手順とは?画像付きで解説
Breezeデータエージェントはワークフロー内に組み込めるので、判定して終わりではなく、その後のアクションまで自由に設計できます。これは便利です!
Breezeデータエージェント利用時のクレジット消費数

今回の検証では、Breezeデータエージェントの実行1回につき10クレジットを消費しました。問い合わせ営業の判定は1件あたり10クレジットとなるため、金額に換算すると約12円です。例えば、月に100件来る問い合わせをすべて判定する場合、必要なクレジットは1,000クレジット(約1,200円)となります。
Professional以上のHubSpotプランを利用している場合は、毎月3,000クレジットが付与されています。そのため、中小規模の問い合わせ件数であれば、追加費用をかけずに付与分の範囲内で十分にテストが可能です。まずは自社の問い合わせ数に合わせて、どの程度クレジットを消費するのかを把握しながら運用を始めるのがおすすめです。
HubSpotクレジットの仕組みや対象機能、料金については、以下の記事で詳しく解説しています。
>>HubSpotクレジットとは?仕組み・対象機能・料金のすべてを分かりやすく解説
HubSpotフォーム営業自動判定フローの導入・運用時の注意点

Breezeデータエージェントを使った問い合わせ営業の自動判定は便利ですが、導入して終わりではありません。より実務にフィットした形で運用するために、押さえておきたいポイントは以下の通りです。
- 会社ごとの「営業」の定義を言語化する
- 過去の営業判定を再利用し、クレジット消費を抑える
- 定期的に精度チェックとプロンプトの微調整をする
順番に見ていきましょう。
会社ごとの「営業」の定義を言語化する
採用や協業、パートナー募集などの問い合わせは、営業扱いになる会社もある一方で、対応したい問い合わせと判断される場合もあります。このように「営業」とみなす範囲は企業ごとに異なります。
プロンプトを設計する前に、自社にとっての「通常の問い合わせ」と「営業」にあたる内容を整理し、共通認識を持っておくことが重要です。線引きを言語化しておくことで、AIの判定基準も安定し、後からの調整もしやすくなります。
過去の営業判定を再利用し、クレジット消費を抑える
一度「営業」と判定されたコンタクトやドメインについては、ワークフローの分岐を使い、再度AI判定をしないのがおすすめです。毎回同じ内容を判定していると、その分クレジットを消費してしまうためです。
過去の判定結果をうまく再利用することで、クレジットの無駄遣いを防ぎながら、必要な部分だけにAIを使う運用ができるようになります。
定期的に精度チェックとプロンプトの微調整をする
AIによる判定は一度設定して終わりではなく、定期的な見直しが欠かせません。月次や四半期ごとに、誤判定された問い合わせの傾向や「判別不可」が多く出ているパターンを確認しましょう。
結果をもとに、プロンプトへ新しい例文を追加したり、分岐条件を修正したりすることで、判定精度を少しずつ高めていけます。運用を続けながらチューニングすることで、自社に合った自動判定フローに育てていくイメージを持つのが理想です。
最初から完璧を目指すより、まずは「誤判定が許容できる範囲か」を小さく検証し、実データに合わせて少しずつチューニングしていくのがおすすめです。
HubSpotのBreezeデータエージェントで「問い合わせ営業かどうか自動判定」して、営業効率を上げよう

問い合わせフォームには、本来対応すべきサービス相談だけでなく、営業目的の連絡も多く含まれます。問い合わせのすべてを人手で仕分け続けるのは手間がかかるうえ、数字の精度やコスト管理にも影響してしまいます。
HubSpotのBreezeデータエージェントを活用すれば、問い合わせ内容をAIが読み取り、営業かどうかを自動で判定可能です。今回の検証でも、実データを使って高い精度で一次振り分けができることが分かりました。問い合わせ対応の工数を減らしつつ、正確なデータに基づいて営業・マーケティング施策を進められる点は大きなメリットです。
ただし「営業」の定義や運用フローは企業ごとに異なります。プロンプトの設計やワークフローの組み方次第で、使い勝手や効果は大きく変わるため、自社に合った形にチューニングしていくことが重要です。
もし「自社の問い合わせ内容だと、どんな判定基準がよさそうか」などで迷った場合は、HubSpot相談会でお気軽にご相談ください。状況を伺ったうえで、最適な設計方針をご提案します。
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