企業が扱うデータ、ビッグデータが、新たなビジネスの資産として注目を集めています。データを有効活用し、事業の成長を加速させていく動きが見られているのです。
特に、営業活動においてデータ活用をすることは重要で、様々な視点でデータ活用を行い、より良い顧客サービスの提供や売上アップへと繋げていく企業も増えています。
そうは言っても、いきなり「データ活用」と聞いても何から始めればよいのか分からない方もいるでしょう。
そこで本記事では、企業が営業活動においてデータ活用を行うメリットや、実際に運用を始める際の4つのステップなどをご紹介します。
コンテンツ目次
データドリブンの営業活動を展開する重要性
あらゆる分野においてデジタル化が進み、データの重要性が増す昨今では、営業分野においてもデータドリブン(Data Driven)が重要視されるようになっています。
ひと昔前まで、営業活動の成果は、個々の営業マンの知識や経験、勘といった力量によるところの大きい、属人性の高いものでした。
それゆえ、高い実力があり、結果を出している営業マンが退職してしまえば、チームや会社全体の業績が下がってしまうことも多く、優秀な営業マンの流出は企業の悩みの種の一つでした。
また、たとえ同じ営業マンが担当を続けるにしても、すべてを記憶して活動することは難しいものです。
顧客の動きやニーズを把握しきれなかったために受注のチャンスを逃したり、顧客の信頼を獲得できなかったりといった弊害も多くあったのではないでしょうか。
しかし、日々の営業活動をデータとして記録し、データドリブンで行うことで、これらの問題は大幅に改善できます。
万が一、優秀な営業マンが退職することがあっても、顧客情報や営業プロセスにおける情報をデータとして残しておくことで、引継ぎが容易にできますし、休眠顧客から問い合わせがあった場合でも、スムーズに対応できます。
さらに、過去の営業活動におけるアポ獲得率、商談率、受注率といったデータを活用、検討することで、現状における課題の洗い出しや業務の改善、効率化も可能になります。
限られたリソースで、効率的に売り上げをあげるためには、データドリブンセールスを行うことは非常に有効であり、有益なことなのです。
これからデータドリブンに取り組んでみようとお考えの場合は、下記記事もぜひご覧ください。
参考:営業をDX化するために取り組むべきことやポイントを徹底解説
営業がデータ活用をするメリット
では、営業活動においてデータを活用するメリットは何でしょうか。改めて整理しておきましょう。
営業活動の効率化、生産性の向上
データを効果的に活用すれば、営業活動の効率化や生産性の向上が期待できます。
たとえば、リードを獲得した経路をデータとして管理・分析することで、効率のよいリード獲得方法がわかり、まるで見込みのないところへもやみくもに営業活動をするような無駄を省けます。
さらに、アポ率や受注実績などのデータを活用することで、より見込み度の高い顧客へのアプローチに注力し、より効率のよい営業活動を展開することもできるでしょう。
また、受注事例を集めてデータ化しておくことで、効果的な営業方法も見えてくるはずです。チーム全体の業績アップに繋げることもできるでしょう。
データを活用することで、営業活動の効率化や生産性の向上を図ることが期待できるのです。
劇的に営業を効率化する方法は、こちらの記事をご覧ください。
ナレッジの体系化、属人性の削減
営業活動のデータを蓄積・分析すれば、営業のナレッジを体系化して誰でも実行できるようになります。それはすなわち、優秀な営業マンを量産することも可能となるということです。
ひと昔前まで、営業といえば、個人の経験と勘が物をいう職種でした。
見込み顧客への訪問頻度や訪問時期、営業トークなどは、担当営業マンの経験による感覚です。それぞれの顧客のニーズや要望、担当者の性格なども、営業担当しか知り得ません。
しかし、これでは、営業担当が変わったときが大変です。顧客の情報をまた一から収集しないといけませんし、ノウハウもないので、前担当と同じような成績を残すことはできません。
会社にとって、大きな損失となることは言うまでもないでしょう。
しかし、顧客情報はもちろん、どのような営業活動をしていたかといったナレッジをデータとして残しておけば、たとえ営業マンが変わっても、また新人であっても、的確なフォローが期待できます。
属人性を削減することで、安定した売り上げの確保が期待できるのです。
営業で企業データ活用を始めるステップ
営業活動におけるデータドリブンの重要性やメリットを知って、早速、実践してみたいとお考えの人もいるでしょう。ここでは、具体的にどのようなことを行っていけばよいのかについて紹介します。
1.まずはデータを活用できる状態にする
まずは営業活動で収集できるデータを活用可能な状態へ整えることから始めましょう。
顧客名や担当者名、連絡先など基本情報を整理し、必要に応じてデータを名寄せしたり、データクレンジングを行ったりします。
きちんと整理しておかないと、同じ顧客に対して重複してアプローチしてしまったり、漏れが生じて機会を逃してしまったりする可能性もあります。
少々手間はかかりますが、成果をあげるためには非常に重要なステップです。顧客の基本情報はしっかり整備しておきましょう。
2.チーム単位でデータ活用を始める
データが準備できたら、早速運用を始めましょう。しかし、いきなり営業部門全体でデータ活用を行うのは案外難しいものです。
まずはインサイドセールスやフィールドセールスなど、役割ごとに分けられるチーム単位で、データを活用していきましょう。
もちろん全体像を把握してデータ活用していくことが重要ですが、インサイドセールスであればどのようなデータを取得でき、活用できるのかなど、各チームで取得・活用できるデータを押さえておくこともポイントです。
把握できたら営業全体として見て、取得したデータをもとにアクションを決めていきましょう。
3.ツールを活用し、本格導入する
データはエクセルなどで管理・運用することも可能ですが、本格的に活用するならSFA(営業支援ツール)の導入は、ぜひ積極的に検討したいところです。
SFAでは、営業活動における情報(顧客情報、商談などの進捗、メール文面、契約)をひとまとめに管理し、レポートへの可視化や分析も行えます。営業活動の効率化に大きく貢献してくれるでしょう。
また、売上予測や受注までの平均日数などの分析も可能で、うまく活用することで営業の成果を最大限引き上げられるはずです。
その他、SFAの特長などはこちらの記事をご覧ください。
参考:【SFA比較】主な営業支援ツール(SFA)の特長と違いを解説
4.運用を定着させ、分析・改善する
SFAの運用は、チームに定着するまで活用し続けることが大切です。
導入当初は、システムに慣れないこともあり、データ入力することを失念しがちだったり、上手く活用できなかったりするメンバーもいるでしょう。
しかし、データドリブンなセールスを展開するためには、営業メンバーにデータを入力してもらわないことには始まりません。
マネジメント側にとっては、少々根気が必要になるかもしれませんが、SFAの運用が定着するよう、チームメンバーに徹底して指導しましょう。
運用が軌道に乗り、ある程度データが集まったら、得られたデータをもとに分析・改善していきます。
分析は、3つのステップに分かれます。まずは主要な指標にのみ絞って前年や前月と比較をする「動向分析」を行い、大まかな流れや現状を把握します。
その次に、営業プロセスの問題点を洗い出す「要因分析」をします。ここでは、アポイント獲得数や商談数、受注率などの定量データから、現時点の営業活動の課題が洗い出されます。
たとえば、受注率が低いのであれば、提案方法や内容に問題があるのか、サービス自体に問題があるのかといった分析が可能です。
さらに動向分析と要因分析から立てた仮説を、「検証分析」で正しいかどうか確認します。仮説に沿って指標の数値を変えてシミュレーションをすると、どこが問題か明らかになるはずです。課題が分かれば方針に沿って改善を行います。
このような流れで、営業活動のデータをもとに、日々の営業活動を改善していきましょう。
営業におけるデータ活用・分析の例
せっかくデータを集めても活用できなければ意味がありません。データを活用して、顧客分析や営業プロセス分析を行うことで、現在の営業戦略で本当に売り上げを上げられるのかがわかります。
顧客分析
各顧客についての売り上げや粗利率といった営業データを分析することは、営業課題を洗い出したり、営業活動の効率化を図ったりするのに、非常に有効です。
たとえば、エリアごとの売上金額と粗利率を比較したところ、目立って成績の悪いエリアが見つかった場合、そのエリアについて何らかの課題があることが容易に推測できます。
競合が大幅に値下げをしてセールスしているのかもしれませんし、自社よりもより顧客ニーズを満たすサービスが新しく現れたのかもしれません。いずれにせよ、調査の上、改善する余地が見つかります。
他にも、顧客ごとの購入頻度や購入金額、最新の購入日時のデータを使って分析することで、優良顧客を選別することができます。どこに注力すべきかが見えてくることで、営業活動の効率化を図れるでしょう。
データを用いて顧客分析を行うことは、売上アップへの近道ともなり得るのです。
営業プロセス分析
問い合わせ件数・商談化率・受注率といった営業プロセスごとの数値データを分析することも、売り上げをアップさせるためにはとても大切です。
たとえば、商談化率は低くないのに、受注率が極端に低い場合、提供するサービスが顧客ニーズを満たせることの訴求が足りていないのかもしれません。または、提供するサービスでは顧客のニーズを満たせないのかもしれません。
前者の場合は、商談用の資料を見直したり、プレゼン方法を再検討の上、ロープレをしたりする必要があるでしょう。
後者の場合なら、ターゲットとする顧客層を変えることを検討した方がよいかもしれません。受注率が高い顧客層の特性を見直し、アプローチしていく方が生産性は上がるでしょう。
このように、営業プロセスごとの数値データを見直すことで、本当に現状の営業戦略を進めてよいのかどうか検討できます。問題がある場合は改善していくことで、着実に売り上げを伸ばすことも可能となるのです。
営業における企業データ活用の事例
最後に、営業における企業データ活用の具体事例をご紹介しますので、参考にしてください。
レバレジーズ株式会社:営業メンバーや顧客の情報管理がスムーズに
レバレジーズ株式会社はインターネットメディアや人材、システムエンジニアリングなど30以上ものサービスを展開する会社です。
以前は、顧客情報や営業進捗状況などのデータは、各事業部門ごとに管理していました。見込み客が他部署と被ることもありましたが、データをバラバラに管理しているため、情報共有がうまくいかず顧客とのコミュニケーションミスも多かったことが問題でした。
このような課題を解決すべくCRMやSFAを導入したところ、顧客情報や営業進捗状況の一元管理が叶い、顧客とのコミュニケーションミスも激減した上、マネジメント側も営業メンバーも業務の効率化に成功しています。
出典:HubSpotで複数サービスの顧客情報を統合。営業担当者の工数削減&顧客と良好な関係を築けるように
スマートキャンプ株式会社:営業活動の可視化し、売上見込みの把握に成功
スマートキャンプ株式会社の課題は、営業担当者の行動を管理しておらず、営業の案件がそれぞれどう進捗しているのか把握できないということでした。
SFAを導入することで、営業の商談履歴や案件のステータスを管理できるようになり、案件一つひとつに対して適切なアプローチを取ることができるようになりました。さらに、顧客数や売上見込みもひと目で把握できるようになり、次の打ち手も考えられるようになりました。報告のための作業時間も30%減を実現しています。
出典:営業報告に掛かる作業時間は30%減です。Sensesを導入してから圧倒的に効率化されています!
株式会社プレコフーズ:複数の営業所を横断した、効果的な営業活動を実現
株式会社プレコフーズは、これまで営業所ごとに営業プロセスが異なり、さらに営業担当者が属人的なノウハウで営業活動を行っていました。しかし、これでは事業所ごとの営業力にバラつきがあり、組織としての営業力としては非常に不安定です。そこで全体の営業力向上を目指すべく、SFA導入を決定しました。
その結果、案件単位での進捗や金額などをスムーズに確認でき、無駄なく進捗共有ができています。また、顧客管理を徹底し、次のアクションを設定して営業活動を推進していくことで、属人化を防ぎながら、年間目標の約2.2倍の新規顧客開拓を実現しました。
出典:前人未到となる年間目標の2.2倍の新規顧客開拓を実現したCRM/SFA活用法
営業がデータ活用をするためのポイント
上手くデータを活用して、効率よく売り上げをアップさせるためには、営業部門とマーケティング部門の連携が欠かせません。データや情報を共有し、上手く役割を分担して進めていく必要があります。
顧客データや情報を共有すれば、マーケティング部門がリードとして引き渡した情報が、営業が既にアプローチ済みのデータばかりだったというような非効率な事態は避けられます。
また、お互いの活動状況について情報を共有することで、マーケティング部門がリード獲得のために実践している方針が正しいかどうか判断することもでき、無駄のない活動ができるでしょう。
さらに、リソースが限られ、営業がなかなかリードのフォローをできない状況においては、インサイドセールスを展開することも可能です。
リードを育て、商談まで進めた時点で営業に引き渡すことで、営業が動くべき工数を大幅に減らすことも見込めます。
マーケティング部門とデータを共有することで、営業活動の大幅な効率化が望めるのです。
まとめ|企業のデータ活用は、どう業務改善へと活かすかがポイント
今回は、主に営業における企業のデータ活用について解説しました。データ活用を進めることで得られるメリットや、どのようにデータ活用を始めればよいのか、ポイントを押さえることはできましたでしょうか?
データの活用は、営業の業務効率化や売上向上に繋がります。少しでも無駄をなくし、効率よく営業活動を進めていくためにも、ぜひデータドリブンを取り入れてみましょう。しかし、いくらデータを集めても活かせなければ意味がありません。最初はスモールスタートでもいいので業務改善へと活かしていくことを意識的に行ってください。
また、営業活動における企業データ活用、デジタル化に不安を感じている場合は、一度プロに相談し設計してもらうことをおすすめします。