営業における目標設定は、企業が成し遂げたい未来を実現したり、経営活動に必要な利益を確保したりする上で、非常に重要な要素です。
目標の立て方が適切でないと、営業担当者が数多くの訪問・提案を重ねたとしても、結果的に利益につながらなかったり、かえって損失を生んだりする可能性があります。営業チーム全員が迷わずに目標に向かって走り、達成できる状態が理想でしょう。
本記事では、営業活動で適切な目標設定をしたいと考えている、営業チームのマネージャーや経営者に知っておいてほしいポイントをご紹介します。
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コンテンツ目次
営業の目標設定が企業にとって重要な理由
具体的な営業の目標設定の方法やポイントをご紹介する前に、改めて営業の目標設定が企業にとって重要な理由を確認しておきましょう。
企業が成し遂げたい未来を実現するため
一つは、企業が成し遂げたい未来を実現するためです。営業における目標数値は、企業が実現していきたい未来に向けての具体的なステップの一部です。
経営者が目指している未来や実現したい夢に向けて、目標を一つずつクリアしていくことで売上が積み上がり、達成に近づいていきます。売上の達成は、企業を成長させるだけでなく、新たな事業の挑戦に踏み出すきっかけや、給与水準の向上で社員のモチベーションが上がる理由にもなります。
10年後の未来を見据えて1年後の目標を定め、営業チームが1年後の目標を達成して売上や実績を積み上げていくことを繰り返し、10年後の未来を作っていきます。このような好循環をつくっていくためには、適切な営業の目標設定が必要です。
経営に必要な「利益」を確保するため
もう一つは、経営に必要な「利益」を確保するためです。先ほど触れたとおり、企業が実現したい未来に向けて走り続けるには、経営活動に欠かせない「利益」が必要でしょう。
社員が30人いて、給与が一人あたり30万円だとしても、月900万円の粗利がなければ給与を支払えません。給与以外にも、福利厚生やオフィス家賃、諸経費などがかかるため、それ以上にお金が必要です。
企業が生き残り経営活動をし続けるためには、潤沢な利益が必要で、その利益を生み出すのは営業チームです。営業が立てた目標に対して達成をしていくことで企業は活動を続けられるため、そういった状態をつくるためには、適切な営業目標が求められます。
営業の目標設定で大切な5つのポイント
では、営業の目標設定で大切にしたい5つのポイントをご紹介します。
会社が存続し新たな挑戦に踏み出せるようにするためには、具体的な数値目標を立てながら、確実に達成できるような目標を立てる必要があります。そうでなければ、営業目標を達成できず、必要な利益を確保できず、会社の存続が危ぶまれるからです。営業目標はポイントを押さえて立てましょう。
会社の状況や方針と営業戦略を合わせる
まずは、会社の状況や経営方針と、営業戦略を照らし合わせて設定できるようにしましょう。新たな人材を確保して営業に力を入れていくのか、新規事業に挑戦して新たな販路や商品開発を行っていくのか、によって達成すべき営業目標や戦略は異なります。
もし新規事業に取り組むのであれば、利益の出づらい事業にヒト・モノ・カネ等のリソースを費やすことになるので、他事業での利益確保が求められます。もし他事業が自身の事業部であれば、営業チームに求められる営業目標数値は高くする必要があるでしょう。
こうした会社の方向性や取り組む内容にあわせて、営業の戦略を立てていきましょう。
過去の売上データから売上予測を立てる
次に、過去の売上データから売上予測を立てましょう。理想的な目標だけを見て設定してしまうと、非現実的な営業目標になってしまう可能性もあります。
前期の売上や現状の見込みを具体的に可視化し、売上予測を立てましょう。この時点で売上予測と売上目標に大きなギャップがある場合、会社の方針を見直すところから始める必要があります。
経営計画や事業計画をもとに立てた、必ず達成しなければいけない利益を、活動次第で達成できそうな場合、高い目標として置いておくこともできます。売上予測と目標とのギャップは、今後顧客になりそうな案件を探していくこと、新たなアクションを実行することによって埋めていくことが求められます。
根拠のある目標を数値化して立てる
売上予測を立てることができたら、営業目標を根拠のある数値をもとに具体的に設定していきましょう。「前年同月比で大幅に売上を伸ばします」といった曖昧な表現ではなく、「前年同月比20%増の売上目標を達成します」といった具体的な数値を入れて目標設定しましょう。
さらには、「前年同月比20%増」が何の根拠をもとに立てられているのかを明示できるようにします。過去の売上実績や会社の売上目標からの逆算といった、様々な要素が絡みますが、闇雲に立てた目標ではなく、根拠となる数値があることを営業チームにも提示しましょう。
また、現場のスキルや状況、課題を把握しないままに目標設定してしまうことも危険です。いくら実績から売上予測を立てたとしても、現時点で営業メンバーに課題やスキル不足がある場合、うまく売上が積み上がらない可能性があるため考慮が必要です。
営業目標の期限を明確化する
具体的な営業目標が設定できたら、期限を明確化します。売上の目標数値のみ設定し、「いつまでに達成するのか?」という観点が抜けることがありますが、期限がないと認識の齟齬が生まれ達成できなくなるでしょう。
上半期の売上目標を立てた場合、各月ごとの目標設定にまで落とし、いつまでに達成しておくべきなのか、期限を明確化していきます。これにより、営業チーム全体が共通認識を持ちながら、行動に移すことができるようになります。
メンバーごとに行動目標を設ける
売上目標と期限が明確になれば、あとはメンバーごとに行動目標を設定して実行するのみです。その際、メンバーごとの具体的な目標設定も忘れずに行いましょう。具体的には、必要となる受注件数や見積もり件数、案件数、テレアポ件数などといった細かな目標です。
各メンバーによってスキルや経験に差がある状態なので、単純に売上目標数値を人数で割るのではなく、経験年数や顧客数などに応じて割り振っていくことが重要です。無理難題な営業目標だと感じてしまったメンバーは、やる気がなくなる可能性もあります。まだ経験値の浅い社員の場合は、マイクロマネジメントしたほうが成果を出しやすいケースもあります。
適切な行動目標までを立てて、メンバーを納得させて行動してもらうよう促すことも重要です。
営業の目標設定で使えるメソッド「THE MODEL」とは?
ここでは、営業の目標設定に使えるメソッド「THE MODEL」をご紹介します。「営業を科学する」といったフレーズがあるように、顧客の獲得や育成などのプロセスを分業し、より高い成果を生み出すためのフレームワークです。
「THE MODEL」では、営業組織を4部門に分ける
THE MODELでは、営業組織を4部門に分けて考えます。マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスの4部門です。
マーケティングでは、潜在顧客を獲得し商品やサービスのターゲットを見つけ出します。そして見つけ出した潜在顧客に対し、インサイドセールスがアプローチし商談を設定します。フィールドセールスはインサイドセールスから受け継いだ顧客に対して提案を行い、商品やサービスの導入・購入へと進めます。受注できたらカスタマーサクセスがアフターフォローとして、顧客が商品やサービスを最大限に活用できるようにサポートします。
こうした流れによって、より効果を最大化して営業効率を上げていきます。
「THE MODEL」を活用した営業の目標設定
営業の目標設定においても、THE MODELの考え方を取り入れることで、より細分化して目標設定ができるようになります。4部門ごとに「母数」「成功率」「ゴール」を数値化していきます。
▼マーケティング
来訪者数×獲得率=見込客数
▼インサイドセールス
見込客数×案件化率=案件数
▼フィールドセールス
案件数×受注率=受注数
▼カスタマーサクセス
受注数×更新率=継続数
ポイントは、それぞれのプロセスのゴールが、次のプロセスの母数になることです。最大効果を得るためには各部門で、確実にゴールを達成し次の段階へと送っていくことが重要です。
営業の目標設定において注視すべきは、インサイドセールスとフィールドセールスの項目でしょう。案件数、受注数を算出するための、案件化率や受注率も明確に試算できれば、より達成率などを可視化しやすい目標設定になります。
SMARTの法則、ベーシック法、ベンチマーク法も活用できる
その他、SMARTの法則、ベーシック法、ベンチマーク法があります。それぞれ簡単にご紹介します。
【SMARTの法則】
どの目標設定にも使えるメソッド「SMARTの法則」は、「Specific(明確)」「Measurable(測定可能)」「Achievable(達成可能)」「Relevant(関連性)」「Time-bound(期限)」の5つの要素に沿って目標を設定します。具体的な目標数値を掲げ、それらを計測し、達成可能なものにします。そもそも会社全体の目標に関連するものになっているかを確認することも重要です。
【ベーシック法】
「目標設定」「達成基準」「期限」「達成計画」の4ステップで目標を設定します。目標の種類は、現時点の強みをさらに強化するものか、弱みや課題を改善・解消するものか、現状維持か、新たな開発に取り組むものかに分類して設定します。立てた目標に対して、いつまでにどこまでできれば達成なのかを定め、達成するための行動などを具体的に計画します。
【ベンチマーク法】
競合他社を指標・基準にして目標を設定します。「計画」「情報収集/分析」「目標設定」「実施検証」の4ステップで、ベンチマークを超えることを目標に設定していきます。自社とベンチマークとのギャップを情報収集や分析で抽出して、目標へと落とし込みます。
営業目標のKPI設定について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
営業活動で使いたいKPIとは?設定するメリットや留意点を紹介
よくある営業の目標設定の失敗例
ここで、営業の目標設定におけるよくある失敗例をご紹介します。目標設定をする上で、以下のような事象が起きていないか、よく確認してください。
過去の営業実績の把握、原因追究ができていない
いきなり営業目標をトップダウンで決めてしまい、過去の営業成績の分析などができてないことがあります。また、過去の実績を把握していたとしても、実績の良し悪しを分析せず、背景にある原因や要因を見ずに設定してしまうと、達成にむけて再現性をもって行動できなくなります。
たまたま前年度が好成績だったのか、それとも明確な行動目標がぴったり戦略としてはまっていたのか、押さえておかなければ無理な目標設定になってしまう可能性があります。過去の売上が良くない場合は、打開策を講じるために原因の分析を行いましょう。
これらを踏まえて目標を設定することで、達成可能な目標になるでしょう。
現場の意見を理解せず、トップダウンで目標設定している
さらに、現場の意見を理解せずに目標設定をしてしまうケースもあります。具体的には、現場の意見や状況を把握することなく、経営者や役員などのみで売上目標を設定してしまうような状況です。これでは現場感もなく、どのように達成するのか道筋もなく、あくまで希望的な目標数値になってしまうでしょう。
営業チームがどのように日々営業活動をしていて、どこに課題があるのか、どの道筋であれば効果が得られるのか、まずは現状を把握することが重要です。集まった情報をもとに、再度目標を設定し直すこともありえます。
事業計画を作成する経営層と現場に大きなギャップがないよう、慎重にリサーチをしながら営業目標を設定するようにしてください。
営業目標の達成に向けて、どうマネジメントするか?
では、営業目標を設定したあと、達成に向けてマネージャーやチームリーダーはどのようにメンバーをマネジメントすればよいでしょうか。目標を設定しただけでは、目標達成は難しいので、以下の点に注意をしながらメンバーのサポートを行ってください。
行動目標を立て、進捗状況を正確に把握する
営業目標から逆算した行動目標を設定し、メンバーがどこまで行動できているのか進捗状況を把握してください。目標の達成度合いや進捗レベルを、できる限りリアルタイムで把握し、一緒に次のアクションを設定したり軌道修正したりすると、目標達成に近づきやすくなります。
注意すべきは、行動目標をさらに細かくアクション単位に落とし込んだ際、目先のアクションばかりに集中をしてしまって、行動目標の達成から遠ざかってしまう状況です。
例えばアポイント獲得数を行動目標に置いている場合、アポイント獲得率を算出しコール数を設定できれば、メンバーはコール数の達成を目指して行動します。ただ、コール数の達成だけを目指してしまった場合に、ただ営業電話をかけただけでカウントしてしまい、本来の目的であるアポイント獲得への意識が薄れるメンバーが出てくる可能性があります。
行動目標の先にあるアポイント獲得数といった本来の目的を忘れないように、「何のための行動目標か」を意識できるような指導をしましょう。
自身の営業目標に納得感を持たせる
メンバーが持つ営業目標に納得感を持ってもらうことは、営業目標の達成にとって重要な要素です。無理強いして行動させることはできますが、営業メンバー自身が目標の意義を感じ、自ら積極的に行動や改善できるようになると、さらに効果的でしょう。
納得感を持たせるには、どのように営業目標が設定されたのか、その背景や意図、現場感とすり合わせた上での決定であること等を伝えることがポイントです。トップダウンで落とされた目標では、疑問が残ったまま行動することになりかねません。
「昨年度の売上額が◯◯万円だった」「受注率◯%だったところを、〜〜〜を改善して◯%へと向上させると達成できる見込みだ」などと、具体的な数字を掲げて説明しましょう。
メンバーが自己成長できるチャレンジ目標を立てる
メンバー自身が自己成長できるチャレンジ目標を立てることも、マネジメント観点でポイントです。必ず達成できると分かりきった目標では、つい気が緩んでしまったりやる気が出なかったりすることもあります。
たとえば、自身が課題に感じている部分を改善しなければ目標達成から遠のいてしまうような営業目標であれば、メンバーも自身の課題を解決すべく新たなチャレンジをすることになります。その結果、成長実感を得られ、より仕事への意欲が湧くでしょう。
マネジメントを行う際は、メンバー自身の成長になっているか、という視点も忘れずに持っておきましょう。
メンバーにアクション後の課題を抽出して改善させる
営業活動を行う中で出てくる課題を抽出し、メンバーもしくはチーム内で話し合い、改善していきましょう。日々やみくもに行動していても、根本的な課題が解決されていなければ目標達成できません。
提案内容に齟齬がないか、適切にサービスを紹介できているか、など細かく振り返ることで、アクションの精度が高まります。チームメンバー同士でお互いに指摘し合うことで、チーム全体のレベルアップも期待できるでしょう。
チーム内で役割分担をする
「THE MODEL」を参考に、インサイドセールスとフィールドセールスをわけて営業活動を行う手法を取ることも検討してみてください。より行動単位でのブラッシュアップを行いやすくなりますし、メンバーごとの得意・不得意を踏まえて業務内容を振り分けることもできるようになります。
成功事例や情報を積極的に共有する
営業チーム内で、積極的に成功事例や参考になる情報を共有するようにしましょう。メンバーごとにスキルや経験が異なることが多いので、バラつきをなくすためにも事例を共有し、メンバー全員がレベルアップできるような体制をつくることもマネージャーの役割です。
定期的にチーム会議を開き、案件管理だけでなくノウハウ共有を行うことで、各人がより効果的な行動をできるようにしていきましょう。
まとめ|適切な営業目標を設定しよう
今回は、営業の目標設定のポイントや「THE MODEL」などのメソッド、よくある失敗例を解説しました。営業目標の設定を誤ると、経営が立ち行かなくなることもありますし、営業メンバーのモチベーションが下がり、目標達成できない可能性もあります。
現場の意見も取り入れながら、慎重に適切な目標設定を行いたいものです。そのためには、営業目標から考えるのではなく、経営方針や営業戦略の全体像から見直す必要もあります。
もし適切な営業目標の設定に不安があれば、一度プロに相談してみてはいかがでしょうか?
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数多くの企業様をご支援してきた経験からBtoBマーケティングに関する質問、疑問にお答えいたします。