EDIは、企業間の取引をスムーズに行ううえで欠かせない仕組みです。しかし、意味や種類、どのような場面で使われているのかなどがよく分からない方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、EDIとは何かについて分かりやすく解説します。導入時の注意点も説明しているので、ぜひ参考にしてみてください。
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コンテンツ目次
EDIとは
EDIとは、「電子データ交換(Electronic Data Interchange)」を意味し、決められた規約にもとづいて電子データを送受信できる仕組みのことです。主に、企業間(BtoB)取引で用いられることが多いのが特徴です。
EDIでは、請求書や納品書といった帳票データをコンピュータへ保存し、双方で共通の通信プロトコル・ファイルフォーマットなどを用いて送受信を実行します。
従来は、FAXや郵送などによってビジネス文書のやり取りが行われていましたが、伝達に時間がかかったり、送信ミスが発生したりしやすいのが課題でした。EDIを活用することで、伝票の作成時間やコストを大幅に削減できるのがメリットです。
EDIとBtoB ECの違い
EDIとBtoB ECの違いは、使用目的にあります。EDIは、今まで紙でやり取りしていた帳票を電子化する目的で作られたのに対し、BtoB ECは、インターネット上でより多くの顧客へ製品・サービスを購入してもらう目的で作られました。
そもそもBtoB ECとは、企業同士が、製品やサービスをインターネット上で売買できる取引やシステムのことです。
EDIは、単純に取引を電子化して効率化するためのツールであるため、同じ取引が継続的に行われるような場合によく用いられます。一方でBtoB ECは、取引先の需要や決済状況に合わせて、マーケティングを柔軟に展開できるのが特徴です。
ちなみに、経済産業省によると、2019年のBtoB ECの市場規模は352兆9,620億円です。実は、BtoB ECの定義の中にEDIでの流通総額も含まれています。そのため、BtoB ECの一部がEDIだともいえるでしょう。
関連記事:BtoB-ECとは|導入メリットと失敗しないために考慮すべきこと
EDIとEOSの違い
EDIとよく混同しがちなのが、「EOS」です。そもそもEOSとは、Electronic Ordering Systemの略で、電子発注システムと呼ばれています。小売店にあるハンディターミナルやタブレットなどを使って、瞬時に発注を行えるのです。
対してEDIは、形のあるシステムそのものというよりも、通信データのやり取り自体を指しています。EOS(システム)を利用するにはEDI(通信)が不可欠なことから、双方が密接にかかわり合っているのがポイントです。
EDIの種類
EDIでやり取りを行う方式には、「個別EDI」と「標準EDI」の2種類があります。ここでは、それぞれの違いを分かりやすく解説しています。
個別EDI
個別EDIとは、通信規格・ファイル形式などを、企業間で個別に取り決める方式のEDIです。
従来は、企業間の交渉において大きな力をもつ、大企業を中心にEDIの構築が進んでいました。そのため、取引を行う中小企業等は既存のEDIに合わせてシステムを開発しなければならず、コスト負担の増加が課題となっていました。
標準EDI
標準EDIは、あらかじめ決められたフォーマットに則って受発注のやり取りができる方式です。個別EDIとは異なり、業界や社会で標準仕様が定められているため、取引先が増えても新しくシステムを構築する必要がありません。
また、特定の業界のみでの使用を前提として作られた「業界VAN」というEDIも存在します。業界VANでは、通信規格やファイル形式、取引規格などを統一できるだけでなく、業界独自の会社コードや商品コードなども共通で使えるのがメリットです。
他業界との取引が難しくなるというデメリットはありますが、同じ業界間での受発注フローをスムーズにできるのが魅力です。
EDIで採用される代表的な通信規格
ここでは、EDIで採用されている代表的な通信規格(標準EDI)をご紹介いたします。
JCA手順
JCA手順は、1982年に日本チェーンストア協会が制定した、流通業界向けの受発注プロトコルです。チェーンストアとメーカー・卸などの企業間で、伝票データの通信をやり取りできます。
今までの流通業界においては、紙の伝票や磁気ディスクなどを用いた受発注が中心でした。JCA手順の登場により、ISDN回線によるデジタル通信で受発注データを送れるようになったのです。
JCA手順の転送速度は1200bps/2400bps・9600bpsで、現在で実行可能な速度と比べると見劣りしています。古くからある手法のため、発注データの送信に1時間以上かかったり、画像や漢字が送れなかったりといった問題が発生していました。
全銀TCP/IP手順
全銀TCP/IP手順は、1997年に全国銀行協会連合会が制定した、金融業向けの通信プロトコルです。JCA手順と同じように公衆回線を使用し、TCP/IP通信でやり取りを行うのが特徴です。
主にTCP/IP通信に対応したモデムやアダプタを利用していれば、取引先とのやり取りが可能。転送速度は1200bps/2400bps・9600bps・19200bps・64000bpsを誇り、JCA手順よりも優れた性能を有しています。
流通BMS(eBMS・EDIINT AS2・JX手順)
流通BMSは、「流通ビジネスメッセージ標準(Business Message Standards)」の略で、2007年に経済産業省の「流通システム標準化事業」で策定されました。主に、流通・小売り業界向けのEDIの仕様で、今まで問題視されていたJCA手順の課題を解決できるとして期待されています。
流通BMSは、公衆回線ではなく、インターネット回線を通信手段として用いているのが大きな特徴。転送速度が大幅に改善したほか、専用の通信機器を用意せずともやり取りできるようになっています。
また、メッセージの送受信に使うフォーマットが、業界全体で統一されているのが特筆すべき点です。従来のように、取引先のデータ書式へ個別に合わせる必要がなくなるため、コスト削減を期待できます。
流通BMSでは、アジア圏を中心に採用されている「ebMS」、欧米を中心に用いられている「EDIINT AS2」、日本独自で制定した「JX手順」の3つの通信手段を採用しています。
インターネットEDIとは?Web-EDIとは?
インターネットEDIとは、インターネットを通信手段として用いるEDI方式のことです。受発注にかかる時間やコストの大幅な削減を期待できます。
NTT東西は、2024年からISDN(アナログ)回線のサポートを徐々に終了していく旨を発表しました。これは「2024年問題」ともいわれ、従来のJCA手順や全銀TCP/IP手順が使えなくなってしまう、といった課題を抱えています。
インターネットEDIは、これらの問題を解決するものとして注目されているのです。
なおWeb-EDIとは、ブラウザベースで受発注のやり取りを行うEDI方式のこと。インターネットEDIの一種で、普段使っているGoogle ChromeやInternet Explorerなどのブラウザで取引ができます。
Web-EDIは、インターネット通信の環境があるだけで仕組みを構築できる手軽さがメリットです。一方で、社会全体で標準化が進んでいない点が課題として挙げられます。
EDIを導入するメリット
ここでは、企業がEDIを導入するメリットを2つ解説いたします。
内部統制を強化できる
EDIを活用することで、会社内で扱うデータや運用ルールを統一しやすくなるため、内部統制の強化を期待できます。
内部統制とは、自社の事業目標を達成するために、ルールや仕組みなどを適切に運用していくことです。EDI導入により、フォーマットのバラつきや書類の紛失などを防ぎ、適正な業務運営が可能になるのです。
内部統制の強化を目的として導入する際は、取引先ごとに請求書や納品書などの形式が変わらないよう、標準EDIを採用できるかどうかがカギになります。
サプライチェーンを効率化できる
EDIを導入することで、取引記録の正確性やリードタイムが向上するため、サプライチェーン内での業務を効率化できます。その結果、需要予測や販売計画、在庫計画などをタイムリーに策定できるのです。
たとえば、メーカーA社と小売りB社が加工食品を取引しているとします。EDIによってお互いのデータを共有していれば、在庫の不足情報を入力するだけで発注が行われ、メーカー側が即座に発送準備を開始できるのです。
サプライチェーンの競争力を向上させるという点においても、EDIの活用は効果的です。
EDIを導入する際の注意点
EDIを導入する際は、少なからずコストや時間が発生します。標準EDIであれば、一度仕組みを構築するだけで汎用的に用いられますが、取引先が独自のEDIを構築しているような場合は、導入に大きな投資が必要になります。
また、どのような種類であっても、取引先と共通のシステムを用いなければなりません。自社だけで完結するものではないので、導入する際は社内外の関係者と協力体制を構築する必要があるでしょう。
自社の業界や取引状況によっては費用対効果に見合わないこともあるため、慎重に検討してから導入することが大切です。
EDIについて理解し、導入を検討してみよう
この記事では、EDIの概要や種類、導入メリットなどについて説明いたしました。業界や業種などによってEDIの発展状況が異なるため、取り巻く環境をよく分析しながら導入を検討しましょう。
EDIとは何かを知り、自社の業務改善やコスト削減につなげてみてください。
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