2022年6月19日に発売された㈱FLUED・松永と、㈱ネットショップ支援室・山本氏の共著『業務効率化からはじめるBtoB営業DX』より、営業DX先進企業のインタビューをご紹介します。
営業DXツール導入までのいきさつや、 デジタル化によって解決できた問題からまだ残されている課題まで徹底取材しました。
プロジェクトの責任者ならではの 苦労話を交えながら、現場のリアルな声をお届けします。
今回は、アナログ・デジタルの両方を使った販促施策で、新規事業立ち上げを成功された株式会社ヘッドスプリングさまのインタビューです。
- 導入ツール:マーケティング自動化システム(MA)、 BtoB専用ECシステム(BtoB-EC)、キャッシュレス決済システム
- お話:代表取締役社長 泉成人さん
- 聞き手: 株式会社ネットショップ支援室 山本 皓一朗氏
コンテンツ目次
新規事業立ち上げ3つの課題
山本:ヘッドスプリングさんは、社内のデジタル化を推進するとともに、新規事業立ち上げにも取り組まれたとうかがっています。
株式会社ヘッドスプリング 泉成人さん(以下・泉):2020年4月、美容クリニック向けのドクターズコスメの卸売業をスタートしました。美容クリニックは日本全国に約4000院あり、ニッチな市場ながら非常に伸びている業界でもあります。
山本:この事業を立ち上げるにあたり、課題はありましたか?
泉:大きく3つありました。
- 新規顧客の獲得
- リピーターのLTV(ライフタイムバリュー=顧客生涯価値)最大化
- 作業の効率化
です。
4つの施策で新規顧客を獲得
泉:新しいことを始めるわけですから、新規顧客の獲得はもっとも大きな問題ととらえていました。そこで、弊社では つの施策を掲げ、その1つ目が、「わたしの名医」という医療ポータルサイトの開設でした。
山本:オウンドメディアによる集客ですね。
泉:2020年6月から、毎月約10本のペースでドクターへの取材記事をアップしています。2022年3月時点で約280本の記事、延べ130人のお医者さんにご登場いただいていますよ。SEOを意識し、狙ったキーワードの上位表示に成功しています。次に、SNSの活用です。Instagramで商品情報を拡散し、「わたしの名医」への流入を促しています。そして3 つ目がDMです。弊社の商品を紹介したチラシですね。全国約4000院の美容クリニックに発送し、注文はWebとFAX 両方で受け付けできるようにしました。
山本:FAX での注文も可能にしたのは意外ですね。
泉:美容クリニック業界は IT リテラシーがまだ低いからです。結果、トータルで120件ほどのお申し込みをいただきましたが、WebとFAXの注文割合は半々といった感じでしたね。
山本:4つ目の施策は?
泉:MAツールの導入です。弊社では「HubSpot」を利用しています。「HubSpot」のフォーム機能を使い、商材の記事ページに問い合わせボタンを設置しました。 こうすることで、問い合わせされたお客様が、Web上のどのページを読んだのかが分かります。こういったデータを、営業の際のクロージングに役立てま した。
クロスセル&アップセルでLTVを最大化
泉:リピーターのLTV最大化にあたっては、取引履歴のあるお客様に再度商品を購入してもらうことで、取引額を大きくし、かつ長くお取引していただくことを目指しました。実は、新規顧客の獲得に注力したところ客単価が下がってしまい、7万円ほどあった客単価が5万円程度に落ち込んだ時期がありました。
山本:具体的にはどのような対策に取り組まれたのですか?
泉:まずはセット販売です。通常、箱単位で販売している美容マスクを3箱のセット売りにしました。 箱当たりの単価を安くすることで、お客様にはお得感があったかと思います。他にも、アイクリームを5本セットにし、「5本買えばもう1本プレゼント」というキャンペーンを実施しました。
山本:セット販売が定着すれば、確かに客単価が上がりますね。
泉:次に取り組んだのがバナー広告です。購入画面に弊社が一番推している商品のバナーを貼ったのです。いわゆる、クロスセル、アップセルですね。
山本:商品発送時の同梱ツールにもこだわられているとお聞きしましたが効果はいかがですか?
泉:そうですね。お客様との接点は、インターネット以外だと商品をお届けするときですから、購入商品を送る際にチラシを同梱しています。しかし、すべてに同じチラシを組み合わせると広告効果は部分的なものに限られます。そこで、無料サンプルを頼まれたクリニックにはアップセルのチラシ、購入履歴のあるクリニックには新商品やキャンペーン、スタッフの紹介チラシと、お客様のセグメントによってチラシの構成を変えました。「セット販売」「バナー広告」「チラシの同梱」、以上3つの施策を進めたことでお客様からの反応がよくなり、結果的に客単価アップにつなげることができました。
山本:ヘッドスプリングさんには、弊社のBtoB専用ECシステム「楽楽B2B」をご利用いただいていますが、購入画面に商品バナーを貼ったり、注文した商品によってお客様をセグメント分けして施策を実施したりと、「楽楽B2B」の機能を上手に活用されていらっしゃいますね。
泉:BtoBのECサイトであっても、 BtoCとやることは同じだと考えています。セット販売も、購入画面に商品バナーを貼ることも、チラシを使い分けることも、BtoCでは当たり前に行われていますからね。
動画コンテンツを活用し作業を効率化
山本:3つ目の課題として、作業の効率化を挙げられましたが……。
泉:商品の説明や使い方などを動画コンテンツとして サイト上にまとめました。この動画は会員登録した企業でないと閲覧できない仕組みになっています。
山本:商品の説明は一般的には営業の仕事とされていますが、動画をアップすることで営業業務の効率化を図られたわけですね。
泉:お客様は、ご自身の空いた時間に動画を視聴でき、疑問に思ったことはその場で解決できます。弊社としても、同じ説明を何度も繰り返す手間が省け、お互いにメリットの高い施策でした。
山本:そういった単純作業をいかに減らせるかは重要ですよね。
泉:クリニックで配布していただく商品パンフレットやPOPなどの販促物も、サイトからダウンロードできるようにしています。こういった利便性の良さも、BtoB専用のECシステムならではだと思います。
アナログとデジタル両方で販路を拡大
泉:おかげさまで、「楽楽B2B」を活用しながら事業を展開したところ、売上ゼロからスタートして、わずか2年で月商が6500万円になりました。取引先は、現在500社を超えています。
山本:それはすごいですね! ここまで順調に売上が伸びた要因は、何だとお考えですか?
泉:BtoB-ECはリピート率が非常に高く、その代わりに新規顧客の獲得は難しく感じていました。そこで、新規の獲得については、アナログとデジタルの両方を使い分けしながら販路を拡大したのがポイントだったと思います。さらに、卸売業は薄利なので、実は、管理コストがかかると成り立たない商売です。その点、BtoB専用のECシステムを導入したことで管理コストがかなり抑えられ ました。実際のところ、「楽楽B2B」と出会わなければこの事業を思いつくことすらなかったと考えています。
山本:「HubSpot」「楽楽B2B」以外にも、導入したツールはありますか?
泉:「後払い.com」(掛払い決済代行サービス)と、ネット上で電子締結や管理などが行える「電子契約サービス」です。契約、与信、入金関係を自動化して、バックオフィス業務を効率化しました。また、「HubSpot」は、問い合わせ、商談、クロージングまで顧客情報が一元管理できるので、営業とマーケティングの効率化につながっています。そして、先ほどからお話ししている「楽楽B2B」は、営業とバックオフィス業務、両方の効率化に役立っていますよ。
山本:今後に向けて、クリアしていきたい課題があれば教えてください。
泉:やはり、電話とFAXによる注文……からは脱却したいですね。どうしても時間や人員といったリソースが取られてしまいます。ただ、すべてをいきなりWeb注文に切り替えるというのはハードルが高いと考えています。ポイント付与や割引、クーポンといったWeb注文での特典を用意しながら、徐々に取り組んでいくつもりです。
山本:人件費が浮けば、管理コストがさらに下がりますからね。
泉:はい。その分をお客様へのサービスに還元できれば、と考えています。
営業DX推進でココが変わった!
- 新規顧客の獲得・リピーターのLTV最大化・作業の効率化アップ
- 売上ゼロから 年で月商6500万円に
- Web受注率を上げることで、さらに効率化を
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株式会社ネットショップ支援室 代表・山本 皓一朗氏と株式会社FLUED 代表・松永の共著『業務効率化からはじめるBtoB営業DX』が2022年6月19日に発売されました。
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