2022年6月19日に発売された㈱FLUED・松永と、㈱ネットショップ支援室・山本氏の共著『業務効率化からはじめるBtoB営業DX』より、営業DX先進企業のインタビューをご紹介します。
営業DXツール導入までのいきさつや、 デジタル化によって解決できた問題からまだ残されている課題まで徹底取材しました。
プロジェクトの責任者ならではの 苦労話を交えながら、現場のリアルな声をお届けします。
今回は、本サイト「営業DX.jp」を運営する株式会社FLUEDの自社事例についてインタビューしていただいた内容をご紹介します。
- 導入ツール:顧客管理システム(CRM)、営業管理システム(SFA)、マーケティング自動化システム(MA)
- 話:代表取締役 松永 創
- 聞き手:株式会社ネットショップ支援室 山本 皓一朗氏
コンテンツ目次
名刺代わりの新サービス「営業DX.jp」
山本:さて、成功事例の最後は、本書の著者、松永創さんに、ご自身の会社での取り組みについてうかがいます。
株式会社FLUED 松永創(以下・松永):まずは、弊社がどのような会社なのかを簡単にご説明します。BtoBビジネスに特化し、企業に対してマーケティング、営業の支援を行っています。具体的には、Web制作やデジタル広告の運用、CRMをはじめとする営業DXツールの導入支援、インサイドセールスの代行、展示会の支援やウェビナー開催支援などを、企画から実行までトータルでサポートしています。
山本:「BtoBに特化」して「企画から実行まで」というところが、御社の大きなセールスポイントですね。
松永:「企画が机上の空論にならないように実務も請け負います!」というスタンスです(笑)。
山本:そういった姿勢を貫かれるなかで、「営業DX.jp」というサービスを立ち上げられたきっかけを教えてください。
松永:「営業DX.jp」というサービスは、実は、弊社の業務を多くの方々にご理解いただくために作られた、と言っても過言ではありません。BtoBビジネスにおけるコンサルティング業務はサービス内容が多岐に渡るため、「何をやってくれる会社なのか」を、ある程度、時間をかけて説明する必要がありました。
山本:サポートの範囲が広いがゆえのジレンマを抱えていたのですね。
松永:そうなんですよ。説明が大変で(笑)。そこで、弊社のサービスが一目で分かるようなパッケージサービスの開発を始めたんです。最初は、「DXのプロに相談できるオンラインサービス」を思いついたのですが、他社との差別化という点で弱いかな、と。そこで、市場とターゲットを絞り込み、「営業DXのプロに相談できるオンラインサービス」となったんです。それが、「営業DX.jp」です。
山本:「営業DX.jp」というシンプルなネーミングにしたのは正解ですね。
松永:特に無形商材の場合、分かりやすさはマーケティング的にも得策だと思いました。提供するサービスについても、「〇〇制作パッケージ100万円」「○件まで/○時間まで月額10万円」など、簡潔にパッケージ化されているほうが、リードを獲得しやすくなるという印象があります。
山本:サービス開始の2019年時点では、DXという名称は、今ほど普及していなかった感じでしょうか。
松永:そうかもしれません。ところが、2020年に入りコロナの影響で社会全体が「DX」に目を向け始めましたよね。それも問い合わせ増加に拍車をかけ、Webマーケティングの効果もあり問い合わせが増えました。
インバウンド型の集客へシフト
松永:「営業DX.jp」の開設を機に、僕自身、知人や顧客の紹介といったアナログな集客法をベースにしていたところを、マーケティングによる集客に寄せていくことにしました。
山本:マーケティングのプロである松永さんの口からアナログ発言とは、少し意外ですが(笑)。そこからのシフトチェンジはどのようにして?
松永:当時は小規模だったこともあり紹介だけで十分やれていたんですよ。医者の不養生みたいな話ですが(笑)。まず、「集客→リード獲得→リード育成→商談化」を見える化するためのカスタマージャーニーマップ(下図)を作りました。そこから、1つひとつ、施策を練っていったんです。
山本:では、集客から、実際に松永さんが行った取り組みを教えてください。
松永:大きく2つですが、まずは、Web広告です。リスティング広告、Facebook広告などに出稿しました。そして、もう1つがコンテンツマーケティングです。こちらはコラム形式のメディアを立ち上げて、SEO対策を行いました。
山本:営業とDXに関する記事、僕も興味深く読ませていただいています。
松永:BtoBのコンテンツマーケティングの場合、単純にサイトへのアクセス数を伸ばしても意味がないですよね。BtoCに比べて検索ボリュームが少ないので、よりニッチで意味のある情報を発信するよう心掛けています。ちなみに、コンテンツマーケティングに関しては、「テクロ株式会社」というパートナー企業と二人三脚でやっています。
次はリード獲得ですが、リードにとってためになる資料、いわゆる「ホワイトペーパー」を作成しました。ダウンロードの際には、会社名、氏名、メールアドレスを登録していただきます。
山本:「ホワイトペーパー」の中身はどんなものが多いんですか?
松永:「知りたいと思ってるけど、面倒くさくて調べたくない情報」がもっともニーズがあるだろうと考えて、「2022年オンライン/オフライン展示会・イベント一覧」や、「マーケティングオートメーション比較表」などを用意しました。
山本:確かに、展示会の情報を自分で調べるとなると、ちょっと億劫ですね。
松永:スプレッドシートにして公開したところ、大きな反響をいただきました。このやり方はさまざまな業種で使えると思いますよ。センサー機器を扱うメーカーだったら「センサー機器スペック比較表」、Web制作会社だったら「制作事例集」……いろいろと応用できますよね。あと意外とみんながやっていないのが、「製品・サービスの料金表」です。これをダウンロードするリードは顕在層ですからね。
山本:登録されたメールアドレスには、どのようなアプローチを?
松永:「営業DXの専門家がお届けする営業DXメルマガ」をステップメール配信し、弊社の動画サイトの案内もしています。
山本:これがリード育成ですね。
松永:そして、商談化ですが、弊社のWebサイト内では、チャットボットからお客様が直接、商談の予約ができるようになっています。予約を受け付けた時点でお客様とスタッフのカレンダーに予定が表示され、ミーティングの招待リンクも自動発行される仕組みになっています。なので、後は、時間になったらWeb会議を始めるだけです。煩わしいことはなるべくMAで自動化するようにしています。お客様はステップメールや動画、ウェビナーなどから弊社の情報を得ている方がほとんどなので、ある程度〝自己紹介がすんだ状態〟で話を始められるようになります。これは強いです。
山本:御社でも「HubSpot」を導入されていますよね。
松永:はい。先ほど紹介したカスタマージャーニーを「HubSpot」で実装しています。「集客→リード獲得→リード育成→商談化」と、それぞれの段階で定量的なデータを取得し、営業に活用しています。たとえば、「ホワイトペーパー」のダウンロード数、顧客情報の獲得割合、その中から商談化した割合、契約に至った割合といったものです。
山本:顧客情報の管理も「HubSpot」を使っているのですか?
松永:取引先ごとにBANTC情報(B:予算 A:決裁権 N:必要性 T:導入時期 C:競合)を管理し、このデータをもとに「見込み度合い」を評価する設定をしています。「見込み度合い」というのは、どのくらいの確率で成約につながるかの指標で、BANTCがすべて揃っていれば「見込みA」、3つ揃っていれば「見込みB」、逆にBANTCが揃っていなければ「見込みC」といった感じです。
山本:これまでの取引履歴をデータ化して、それを新たな取引先情報に紐づけている、ということですね。「HubSpot」のフォーキャスト機能は活用されていますか?
松永:フル活用しています。やはり一番気になるのは各月の予算と売上見込なので、商材別、事業部別、個人別と、さまざまな角度から売上予測を見られるようにしています。受注から実際の売上が立つまでに、通常は2〜3カ月はかかるので、具体的な数字はなかなかつかみづらいですよね。なので、フォーキャストを使い、仮に3カ月先の売上が少ないとなったら、早めに手を打つようにしています。
山本:売上予測がグラフで可視化されるので、社内での情報共有もスムーズに行えますよね。
自社でもツールを開発・販売
山本:集客方法をWebに切り替えたことによる、数字的な成果をうかがってもいいですか?
松永:「営業DX.jp」立ち上げ当初の2019年と比較すると、2022年には、売上が2.5倍になりました。リード獲得数は8倍です。
山本:売上がこれほどアップしたということは、商談数も増えたってことですよね。
松永:そうですね。今は1日平均12件ほどです。実は、営業活動をさらに効率化させるため、自社で新たなツールを開発したんです。
山本:ないものは作る、ですね(笑)。
松永:はい、何を隠そう、効率厨なので(笑)。「FINDFOLIO(ファインドフォリオ)」は、企業の売上高、従業員数、電話番号、正式名称、法人番号などを自動で抽出するツールです。商談前の事前調査にはこれを使っています。社内専用ツールとして開発したのですが一般公開することにしました。
山本:それはいいですよね。通常リード情報って氏名、メールアドレス、会社名ぐらいですから。業種や売上高、従業員数がわかると戦略も立てやすくなりそうです。
松永:そうなんです。それだけでなく、「代表者氏名」「代表電話以外の連絡先」「部署情報」などの連絡先情報や、「SNSアカウントがあるか」「WebサイトにMAツールが入っているか」「採用に力を入れているか」「コールセンターを持っているか」みたいな情報までデータベースから表示できるんですよ。
山本:そこまでの情報が網羅されることはなかなかないので、活用の幅が広がりそうですね。
松永:このようなデータを活かしたBtoBマーケティングは、ABM(アカウントベースドマーケティング)と言われますが、そもそもデータ活用が大変なのでハードルが高く、大企業しか実施できないのが課題でした。「FINDFOLIO」は月額5万円からと安価に提供しているので、ABMのようなマーケティング手法をもっと身近なものにできたらと思っています。
営業DX推進でココが変わった!
- アナログな営業からマーケティング集客へシフト
- 売上2.5倍、リード獲得数は8倍に
- 今後はデータを活用したABMを実施
書籍のご購入はこちらから
株式会社ネットショップ支援室 代表・山本 皓一朗氏と株式会社FLUED 代表・松永の共著『業務効率化からはじめるBtoB営業DX』が2022年6月19日に発売されました。
明日からでも始められる営業DXのヒントが詰まった1冊となっておりますので、営業DXを進める第一歩として、お手に取っていただければ幸いです。