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BtoBマーケティングにおいてはイノベーター理論はBtoCとちょっと違うのではないか、という話

2022.08.17

2023.06.08

COLUMNS

こんなヒトに読んでもらいたい

  • IT業界、特に「○○業のDX!」といったツールを提供している会社の方
  • BtoBのマーケティングやプロモーションに行き詰まりを感じている方
  • これからBtoBで製品開発をしたりGo-To-Market計画を作る予定の方

よくあるイノベーター理論・プロダクトライフサイクルについて、とBtoBでの落とし穴

こちらは、よくあるイノベーター理論、プロダクトライフサイクルの図です。「プロダクトライフサイクルそのもの」や「キャズムとはアーリーアダプター以降の壁を超えることですよ」みたいな話は割愛することにします。

ところで、弊社(株式会社FLUED)は、BtoBを中心にマーケティング・営業DXを支援する企業です。おかげさまで多数のご支援をさせていただくなかで、無数にこのイノベーター理論について会話しましたが、

あれ、BtoBの場合はこのイノベーター理論当てはまらないんじゃね・・・?

と思うことがよくあるので、改めて見直してみました。

ちなみにこの理論自体は1962年にアメリカ・スタンフォード大学の社会学者 エベレット・M・ロジャース教授が完成させた理論みたいですが、やっぱりあくまでBtoCを念頭に書かれているみたいですね。この辺の専門家ではないのでご容赦ください。

【違和感その1】イノベーター2.5%もいなくないっすか?

はい、まずイノベーター2.5%もいない気がします(あくまで感覚値)。

イノベーターを

  • いわゆる都内キラキラスタートアップ系の企業
  • 地方の優良企業で地方からDXを進めたい!と考えて実践している企業

だと(すごく強引に)定義すると、せいぜい5,000〜10,000社くらいじゃないでしょうか?これに対して、国内企業数は421万社だったり、従業員数10人以上の企業に絞っても42万社だったり…。

5,000〜10,000社(仮) / 国内企業数421万社 ≒ 0.1-0.2%

5,000〜10,000社(仮) / 国内企業数(従業員10名以上)42万社 ≒ 1-2%

うーん…やっぱりイノベーターが(社数ベースだと)足らない気がする…。そもそも日本企業の多くは中小企業、10人以下のSMBがとても多いですよね。

ちなみにこれを考えるきっかけになったのは下記の「バクラク」さんの導入事例で、九州で馬肉通販・卸をやっている企業さんの記事です。「これぞイノベーター!」という感じなので一旦読んでからこの後を読み進めてみてください。

九州で一番DXが進んだコーポレート部門を目指して。独自KPI「バクラク率」を作り、デジタル化を推進 – バクラク

バクラクという請求管理DXツールの導入事例ですが、この事例で、登場する倉崎さんは

「DXが進んだ」とは、『7つの習慣』(スティーブン・R・コヴィー 著)で言われているところの第2領域の業務、「緊急ではないが重要な活動」に集中できている状態を実現することだと思います。社員が付加価値を生み出すことに時間を使い、しっかり会社の経営に携わっている状態を、弊社では目指しています。

社長としての本気度を事業部の担当者に伝えるため、請求書のデータ送付にご対応いただいた取引先数を社内のKPIに設定しました。弊社ではそのKPIを「バクラク率」と呼び、最終的には90%になるよう取り組みはじめました

とインタビューでお答えになっています。す、素晴らしい…あるべき姿を定義し、独自に社内導入推進のためのKPIを設定し…これぞイノベーター!

「ウチの顧客もこんな顧客ばかりだったらなあ」と思ったSaaS企業の貴方、胸に手を当てて考えてみてください。

  • こんなお客さん、どれくらいの割当でいますか?ターゲット市場のを企業100社ランダムに抽出したとして、2−3社くらいの割合でいますかね?
    • え、問い合わせしてくれる会社の1割はこんな会社?それはダメです。問い合わせしてくれる時点で相当イノベーター気質です。サンプルを偏りなくターゲット市場の企業をランダムに抽出したとして、で答えてください、いなくないですか?
  • 本当に12.5%もアーリーアダプターがいるでしょうか?この企業さんほどではないけど、他の事例を参考にするなどして自分で検索して問い合わせしてくれるような企業です。

また、こういうデータもあります。クラウド会計ソフトの利用率の推移です。

※このデータちょっと怪しいのでちゃんとFreee/MFの導入社数とか調べたい

引用元:MM総研

クラウド会計といえば、Moneyforward・Freeeは躍進していますし、実はクラウド会計市場シェアTOPは弥生会計(実はクラウド会計シェアの半数強を占めるらしい)だったりと、かなりDX化が進んでいる印象があります。

が、実は会計ソフトすら使っていない会社が多い…?こんなに一般的になったと思ったのにまだまだ…?

【違和感その2】何やってもダメ層がもっといるんじゃないか説

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前章で、「イノベーター・アーリーアダプター層が少ないんじゃないか」という話をしましたが、もうひとつ疑問があります。

  • じゃあ残りは全部アーリーマジョリティなの?レイトマジョリティなの?それともラガードなの?

ということです。個人的には残念ながら「ラガード」がめちゃくちゃいるんじゃないかと思ってます。

さて「ラガード」について、みなさんどれくらいご存知でしょうか?ここって意外と解像度低い部分ですよね。

多分ラガードの多くは、僕の地元(九州)で商店とか不動産屋さんをご夫婦でやられている…ような企業さんなんだと思います。イメージとしてはウチの妻(熊本)の実家の縫製屋さんとか。ご夫婦+パートさん数名みたいな。

※画像はイメージです

この地方ラガード層と、いわゆる都内SaaS企業の間には大きな隔たりがある気がします。

  • 普段「ラガードとはなにか」みたいなコンテンツに触れる機会がない
  • 普段「THE ラガード」みたいな企業さんと会話することがない

のが原因なんじゃないかと。

またこのラガード層の特徴は、

  • WEBというだけでも「よくわからないのでNG」
  • そもそも現状をもっと良くするつもりはない

なのではないかと思っています。

こんなデータがありました。業界ごとのIT投資比率に関する経済産業省(中小企業庁)のアンケートです。

引用元:中小企業庁

全産業でも24%(全体の1/4!)、運輸業では36%、宿泊業では49%の会社が「IT投資は行っていない」らしいです…。売上1億の企業だとして、1%未満って100万円以下になりますが…それ以下だ、ということですね…。

ちなみにこの”IT投資”には、PCやスマホなどのデバイスも含めるみたいです。開発とかクラウドサービス導入とかではなく。マジですか…

ああ、もう

  • 費用対効果があうから
  • 効率化できそうだから

とかそういう論点じゃないんですね。そもそも「現時点でDXやってないし、これからもやらない」んだなと。

ちなみにこんなデータもあります。社長の平均年齢データですが、2020年についに60の大台を突破しました。東京でDX関連の仕事をしているとそんな実感はないかもしれませんが、かなり高齢化してきていますね。

引用元::帝国データバンク

…なんかここまで書いてきて、BtoBでラガードまで製品・サービスを行き渡らせるのって無理ゲーな気がしてきました。はい。

ちなみにBtoC含めて普及率が90%以上のものってなんだろう・・・と考えた時にケータイ(ガラケー含)と洗濯機とかくらいしか思いつきませんでした。なんかいい例あったら教えて下さい…。

結論

いかがでしたでしょうか。改めてこの記事は

  • IT業界、特に「○○業のDX!」といったツールを提供している会社の方
  • BtoBのマーケティングやプロモーションに行き詰まりを感じている方
  • これからBtoBで製品開発をしたりGo-To-Market計画を作る予定の方

向けに理想と現実をすり合わせる目線で書きました。

だからどうというわけではないのですが、僕が思うところとしては

  • BtoBにおいてイノベーターとアーリーアダプターはBtoCより少ないと認識しておく必要がある
  • ごく一部のイノベーター層に刺さったからと言って安易にPMFしたと思わないほうが良い
  • イノベーター層/アーリーアダプター層だけをターゲットにしても勝てる(意味のある?)市場で勝負したほうがよい
  • ある程度は「何をやっても取れない」企業がいる想定でTAMの設計とかGo-To-Market計画を作る方がよい
    • 市場にもよるけど、僕の感覚では30〜40%くらい?
  • 今まで「キャズム:アーリアダプターとアーリーマジョリティの間の高い壁」だと思っていたものが「その前の谷:イノベーターとアーリーアダプターの間にある意外と深い谷」だったみたいなこととかあるかも
  • シリーズAではイノベーター層だけをターゲットにしてたけどシリーズBではそうもいってられなくなってCPA爆上がりする可能性…とか認識しておいたほうがよい

みたいなところは認識しておく必要があるのでは、と思う次第です。

BtoBマーケティングって大変ですよね…。

市場・ターゲットの検討から施策の企画・実行まで、BtoBマーケティングについてのお悩みは、ぜひ弊社にご相談ください!

株式会社FLUEDではBtoBのマーケティングにお悩みの方へ、無料のオンライン相談会を実施しております。

数多くの企業様をご支援してきた経験からBtoBマーケティングに関する質問、疑問にお答えいたします。


松永創

FLUED CEO / 代表取締役 Hubspotシニアスペシャリスト

B2Bマーケティングエージェンシーでベンチャー企業から大手IT企業、製造業など様々なマーケティングに携わる。 HubSpotゴールドパートナーとしても認定され、サポート実績多数。WEBを中心としたオンライン施策から、インサイドセールスや展示会といったオフライン施策まで幅広く支援している。携わった企業/プロジェクトの数は500以上に及び、スピード感あふれるコンサルティングには定評がある。 B2Bマーケティング/営業DXなどのテーマを中心になど講演多數。