経営戦略を策定する際は、自社が置かれている環境や競合他社などの情報を事前にしっかりと分析することが大切です。分析により自社の強みや将来的な脅威を明らかにすることで、経営戦略の質が高まるためです。
本記事では、経営戦略策定時に役立つ10種類の分析手法(フレームワーク)を紹介します。それぞれのポイントを詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。
手法によっては経営戦略策定時だけでなく、マーケティングや製品開発にも効果を発揮しますので、知っておいて損はありません!
コンテンツ目次
経営戦略の立案には経営分析フレームワークが役立つ
経営戦略を策定する際は、ただやみくもに内容を考えていても適切なアウトプットができず、全体のまとまりに欠ける恐れがあります。内部環境や外部環境の要因を的確に捉え、効率良く戦略を構築するには、経営分析用フレームワークのような枠組みが必須です。
フレームワークとは、意思決定や問題解決のための共通的な考え方を指します。なかでも経営分析向けのフレームワークは、経営における現状の課題や方向性を明らかにできるため、ロジカルな経営戦略を策定する際に役立ちます。
経営戦略策定に役立つフレームワークには、3C分析やファイブフォース分析、SWOT分析などの幅広い手法が存在します。思考時間を短縮しつつ、適切なアウトプットを行うためにも、用途に合わせて選び分けましょう!
企業の経営分析に役立つ手法10選
企業の経営分析に活用できる手法(フレームワーク)は次の通りです。
- 3C分析
- 4P分析
- 7S分析
- ファイブフォース分析
- SWOT分析
- STP分析
- PPM分析
- PEST分析
- VRIO分析
- バリューチェーン分析
それぞれの特徴や使い方を解説します。
3C分析
3C分析は、「Customer(市場・顧客)・Competitor(競合)・Company(自社)」の3つの要素から、内部環境や外部環境を分析するための手法です。それぞれの要素で次のような点を検証します。
- Customer(市場・顧客):
ニーズがどのように変化しているか - Competitor(競合):
環境の変化に競合他社がどのように対応しているか - Company(自社):
市場や競合他社の傾向を踏まえ、自社の成功要因はどこにあるのか
3つの要素を深掘りすることで、自社の強みと弱みが明確になります。そこから市場参入の可否や既存戦略の改善に役立てられるのが利点です。
3C分析は、特に環境変化のスピードが激しい現代のビジネスに欠かせない手法です。
4P分析
4P分析は、「Product(製品・サービス)・Price(価格)・Place(販売場所・提供方法)・Promotion(販促活動)」の4つの要素から、自社製品の強みや弱みを明らかにするための分析手法です。それぞれの要素で次のような視点での検証を行います。
- Product(製品・サービス):
どのような製品を提供するのか - Price(価格):
その製品をどの程度の価格で提供するのか - Place(販売場所・提供方法):
どのようなチャネルを通じて製品を提供するのか - Promotion(販促活動):
どのような手段で販売促進を行うのか
4P分析では、後ほど紹介するSWOT分析と組み合わせて活用するのが一般的です。SWOT分析により、自社が強みとするリソースが割り出されるため、それを活用して自社製品の本質的な価値を探ります。
7S分析
7S分析は、ハード面の3要素とソフト面の4要素から成り立つ分析手法です。それら7つの要素は企業の重要な経営資源であり、分析結果をもとに適切な経営戦略を考案します。
ハード面の3要素 | ・Strategy(戦略) ・Structure(組織構造) ・System(システム) |
ソフト面の4要素 | ・Shared value (共通の価値観) ・Style(組織風土) ・Staff(人材) ・Skill(能力) |
7S分析を実施するには、まず7つの要素に関するデータ収集やヒアリングを行い、課題と原因を洗い出します。費用対効果を踏まえて複数の課題に優先順位を付け、それぞれに対処する流れです。
組織が置かれている現状を客観的に把握できるため、企業の持続的な成長には欠かせない手法だといえるでしょう。
ファイブフォース分析
ファイブフォース分析は、市場全体や競合各社の状況・収益構造を明確にし、そのうえで自社の競争優位性や利益の上げやすさを推し量る手法です。次の5つの要素によって成り立っています。
- 業界内の競合の脅威
- 買い手の交渉力
- 売り手の交渉力
- 新規参入の脅威
- 代替品の脅威
経営戦略を考える際は、先立って業界全体の構造を理解すると、解像度の高い内容に仕上がります。ファイブフォース分析では、個別の企業ではなく産業(業界全体)に対する分析を行い、自社との適合性を見極められるのがポイントです。
例えば、競合他社の数が多く、多方面での差別化が求められる状況では、業界全体として利益を出しにくい構造だといえます。さまざまな脅威や力関係を正確に理解することで、収益を上げるために何が必要かが見えてきます。
SWOT分析
SWOT分析は、「強み(Strength)・弱み(Weakness)・機会(Opportunity)・脅威(Threat)」の4つの視点で内部環境と外部環境を洗い出し、自社が置かれている現状を把握する分析手法です。内部環境には「強み(Strength)・弱み(Weakness)」、外部環境には「機会(Opportunity)・脅威(Threat)」が含まれています。
例えば、競合他店よりも店舗の立地が優れている場合、それが内部環境における自社の強みとなります。ポジティブな面でだけなく、ネガティブな側面にも着目することで、現状の把握とともに戦略の改善が可能です。
STP分析
STP分析は、「Segmentation(要素の細分化)・Targeting(狙うべきセグメント)・Positioning(構築すべき自社の立ち位置)」によって成り立つ分析手法です。経営戦略を策定するうえで、ターゲットとなる市場や顧客を明らかにするのに役立ちます。
狙うべき範囲を特定すれば、自社が最も効率良く利益を上げられるパターンがわかるため、経営戦略の精度向上につながります。
場合によっては、小商圏で盤石な地位を築いた後、大商圏にまで事業範囲を広げるなど、段階的に複数のセグメントを対象とする戦略を構築できます。
PEST分析
PEST分析は、「政治(Politics)・経済(Economy)・社会(Society)・技術(Technology)」の4要素から成り立つ、マクロ環境を分析するための手法です。マクロ環境とは、政治や経済、社会などに関する、自社でコントロールするのが難しい外部環境を指します。
PEST分析では、将来的なマクロ環境の変化によって被る自社への脅威を洗い出します。これにより、市場の将来性や消費者の行動様式の変化などを予測し、不測の事態に備えられるのがメリットです。
また、外部環境の変化が自社に好影響を与えそうなら、事業拡大のチャンスとして捉えることも可能です。
PPM分析
PPM分析とは、経営資源の効率的な配分方法を特定するための分析手法です。「市場占有率(マーケットシェア)」と「市場成長率」の2つの軸上に次の4つの要素が含まれています。
- 花形(Star):
市場占有率と市場成長率のいずれも高い製品 - 金のなる木(Cash Cow):
市場占有率が高いものの市場成長率が低い製品 - 問題児(Problem Child):
市場成長率が高いものの市場占有率が低い製品 - 負け犬(Dog):
市場占有率と市場成長率のいずれも低い製品
上記の枠組みには、自社製品だけでなく競合製品もあてはめます。その結果、競合企業と自社との間で売上や製品にどのような格差があるのかがわかるため、事業の維持・強化・撤退といった経営判断のヒントになり得ます。
VRIO分析
VRIO分析とは、「Value(価値)・Rareness(希少性)・Imitability(模倣可能性)・Organization(組織)」の4要素によって成り立つ分析手法です。自社の有形資産や無形資産、組織力などを、それぞれの要素にあてはめて評価します。
自社の経営資源を客観的に把握することで、競合他社との差別化ポイントが明確になります。それをもとに製品や人材などの面において、独自の価値を創出できるのが特徴です。
バリューチェーン分析
バリューチェーンとは、「購買・製造・出荷・マーケティング」などのような、付加価値を生み出す一連のプロセスを指します。上記の工程間で生み出される具体的な価値を分析する手法を、バリューチェーン分析と呼びます。
分析を通じて一連の流れが可視化されるため、どの箇所で利益が出ているのか、反対にボトルネックはどこかといった現状を把握できます。また、競合他社と比較することで、バリューチェーン全体での差別化が図れるのもポイントです。
経営分析手法を活用する際の注意点
経営分析手法を使用する際は、いくつか注意すべきポイントが存在します。
- フレームワークはあくまで手段にしか過ぎない
- 使い方によってはミスリードにつながる可能性がある
ここでは、上記2点について詳しく解説します。
経営分析手法はあくまで手段にしか過ぎない
経営分析手法は、あくまで目的を達成するための手段です。ここでいう目的とは、経営分析によって経営戦略の質を高め、持続可能な事業へと発展させることにあります。
そのため、特定の手法のみにこだわったり、分析にばかり時間や労力を割いたりと、目的と手段が混同しないように注意が必要です。
経営戦略の質の高めるには、今回紹介したフレームワーク以外に、ブレインストーミングやPDCAなどの手段も活用できます。さまざまな観点から自社にとって最適な手段を洗い出し、効率良く戦略策定プロセスを進めることも大切です。
使い方によってはミスリードにつながる可能性がある
今回紹介した経営分析手法は、フレームワークと呼ばれるだけあり、汎用性に優れる特徴があります。しかし、場合によっては社会環境の変化で手法そのものが陳腐化し、ミスリードにつながるリスクがある点も忘れてはいけません。
常に変化し続けるビジネス環境を柔軟に捉えるには、根本的な考え方にも柔軟性が求められます。「より適切な手法はないか」「本当にフレームワークを使用する必要があるか」など、経営分析手法の選び方にも配慮が必要です。
自社に合った適切な分析手法を使って経営戦略の精度を高めよう
経営分析手法には、3C分析や4P分析といった幅広い種類が存在します。これらのなかから自社に最適な手法を選択するには、それぞれの特徴や仕組みを理解することが重要です。
そのほか、目的と手段を明確にする、手法の選び方にも配慮するなど、事前に気を付けるべきポイントも存在します。
今回紹介した各手法の特徴や使用時の注意点を参考に、さっそく自社に合うフレームワークを探してみてはいかがでしょうか。適切な手法を活用することで、経営戦略の質向上につながります。
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