The Model(ザ・モデル)と呼ばれる営業の考え方をご存知でしょうか。The Model(ザ・モデル)とは、営業活動をリード創出から契約、契約後のフォローまで1人で行うのではなく、各部門の専任担当者に分けて分業制を敷く営業スタイルです。
具体的には、リード創出のマーケティング、リードフォローのインサイドセールス、そして提案、交渉、受注業務のフィールドセールス、受注後に既存顧客サポートを行うカスタマーサクセスと、4つの機能に分けます。このようにそれぞれの営業活動を分業して行うことを指します。
The Model(ザ・モデル)型の営業組織は現代に求められ、取り入れている企業も増えてきています。今回はThe Model(ザ・モデル)というタイトルの本をもとに、営業アプローチがどのように変わってきたのか、なぜThe Model(ザ・モデル)という考え方が求められているのかを前半にお伝えします。
そして後半では、実際にThe Model(ザ・モデル)型の営業組織を成功させるために気をつけるポイントに触れていきます。
本書は、本サイト「営業DX.jp」を運営する株式会社FLUEDがコンサル先にもお勧めしている本であり、営業DXを実現する上でも多くの点で参考になります。
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コンテンツ目次
SaaS時代に必須の本『The Model(ザ・モデル)』とは?
The Model(ザ・モデル)という本は、福田康隆氏によって執筆されています。福田氏は大学卒業後、2001年に日本オラクルへ入社し、米国のオラクル本社に出向します。その後、2004年に米セールスフォース・ドットコムに転職し、米国初のThe Model(ザ・モデル)型の営業手法に触れ、その手法を日本に持ち込みます。
日本に帰国後、セールスフォース・ドットコムに在籍し、以後9年間、専務執行役員兼シニアバイスプレジデントを務めます。日本市場の成長に大きく貢献し、2014年に、マルケト入社と同時に代表取締役社長となり、2021年6月現在は、ジャパン・クラウドのパートナーおよびジャパン・クラウド・コンサルティング株式会社の代表取締役社長を務め、日本進出を考えている外資系クラウド企業の支援を行っています。
SaaSビジネスの最前線で活躍した福田氏が、その経験と実績をThe Model(ザ・モデル)の本にしたため、現在のSaaS時代の必読書となっています。本記事では冒頭の5章について簡単に触れていきます。
第1部 アメリカで見た新しい営業のスタイル
第1部では、福田氏のオラクル時代から本社への出向、その後米セールスフォース・ドットコムに転職した経験、マルケトに代表取締役社長として就任するまでの経緯が述べられています。
著者は米国時代に、現地で行われている営業手法、The Model(ザ・モデル)に出会い衝撃を受けます。
例えば著者は、日本では当たり前の対面営業に対して、米国では移動距離の問題から効率性を考え、電話ですべて行われているという事実を知ります。電話で最初から最後まで商談が行われ、契約まで完結することを通し、その手法は日本では通用しないと思いつつも、日本にも効率性を求めた営業スタイルを根付かせるためのミッションを受けるようになります。
また、カンや経験に基づいた営業スタイルではなく、営業組織を分業制にするThe Model(ザ・モデル)型の営業手法について、初めて触れています。それぞれの部門が細かいKPIによって管理されており、「SFA」と呼ばれる営業支援ツールを最前線で活用する様子を説明しています。
帰国後著者は、日本でThe Model(ザ・モデル)型の営業組織を根付かせ、結果を出し続けます。第1部では、徹底的な営業プロセスの管理と改善がその後の日本市場の成長につながった理由、また、SaaS市場の最前線で著者が感じた、日米のビジネスの考え方の違いや、困難に直面したときの経験などが語られています。
第2部 分業から共業へ
第2部では、The Model(ザ・モデル)を会社組織に機能させるためのプロセスに触れています。
前半部分では、「分業」というテーマで、営業がこれまで行っていた「先発完投型」の手法から脱却し、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスに分業して行う「継投リレー型」の営業方法を詳細に説明しています。
ここでは、分業することのメリットや、分業した時の部門間連携の重要性、部門内での独立したKPI設定や達成度合いの管理の大切さなどが述べられています。
また、営業プロセスをステージごとに定義する点や、ステージが変わる際の定義、CRO(チーフ・レベニュー・オフィサー)と呼ばれる、会社全体の売り上げに責任を持つ役職の重要性などについても触れられています。
後半の「共業」については、分業するだけで完成ではなく、部門間で重なり合うKPIを持つことで断絶を防ぎ、パフォーマンスを上げることの難しさについても記載されています。一見、分業は効率的に見えますが、単純に業務を分けるだけだと部門間で断絶が起き、期待されたパフォーマンスが出ないという研究結果があるため、分業に加え「共業」の重要性についても強調しています。
第3部 プロセス
第3部は、営業の前段階の、マーケティングやインサイドセールスに焦点を当て、見込み顧客であるリードの創出から、リードへいかにアプローチするかという点に触れています。
インサイドセールスも営業と同様に、リードへアプローチする際、ステージ管理が重要です。本書では、コールの仕方や、「限られた8時間の業務時間をいかに有効活用すべきか」を突き詰めることの重要性も説いています。
またインサイドセールスは、フィールドセールスへのキャリアパスにも重要なポジションであり、外注化をせず、業務を通じて経験を積んでいくための、会社の大切な資産として捉えています。
後半は、フィールドセールである営業のステージ管理について、各フェーズの詳細説明をしています。「フォーキャスト」と呼ばれる、営業の数字のヨミに関する考え方も大いに参考になります。最後の部分では、カスタマーサクセスについて触れており、営業活動全体のプロセスにおいてどういう考え方を持つべきか、営業と協業し、KPIを管理しながら顧客との関係をいかに良好に保つべきか、について示唆を与えています。
第4部 3つの基本戦略
こちらの章では、営業活動に重要な、以下の3つの戦略について説明しています。
「市場戦略」– 会社にはそれぞれの規模やステージがあり、強者の戦い方、弱者の戦い方のどちらかを選択すべきだと述べています。戦いどころを見極め、一気に勝ちに行くことの重要性など、市場を冷静に見極めることの重要性に触れています。
「リソースマネジメント」– 組織は常に流動性があり、最初から即戦力として働ける人ばかりではなく、「ランプアップ期間」と呼ばれる、会社に慣れる助走段階を考慮して組織編成を取ることが重要だと述べています。そのための目標設定や、「コンペンセーションプラン」と言われる、報酬に関する設計を正しく設定すること、不公平になりがちなテリトリーマネジメントの公平性についても触れています。
「パフォーマンスマネジメント」– 優れたマネジメントが数字をどのように判断するか基準を設けることが重要であると述べており、マネージャーがデータを重要視することは前提として、積み上がった数字の裏で何が起きているか、マネージャー自身が想像力を働かせることが高いパフォーマンスを出す上で重要と説いています。そのためには、判断指標を一つに絞らずに複眼的な観点をもつこと、客観データである数字と、主観的な要素が、結果としてどのように表れるかを見極めることが重要である説明しています。
第5部 人材・組織・リーダーシップ
人材・組織・リーダーシップについて経験してきた著者は、メンバーを採用し、チームを作り、リーダーシップを発揮し、チームを導くことこそが経営だと理解します。その経営に関して、ベストプラクティスについては多くの情報が溢れているが、その差を分けるものは「実行力」であると考えます。
特に、ラリー・ボジディ、ラム・チャランの『経営は「実行」』という本が著者に大きな影響を与えたそうです。著者は経営を実体験する中でその面白さに触れました。もっと深く学びたいという思いから、著者はその後ビジネススクールに通い、ビジョン・ミッション・バリューが会社全員の力の源であると感じ、その重要性を説いています。
参考:「マーケティング」だけ「営業」だけでは通用しない時代科学的な成長モデルを大公開
The Model(ザ・モデル)の本が評価される理由
本章では、営業に関する多くの書籍が世に出ているにもかかわらず、なぜThe Model(ザ・モデル)の本が評価されるのか、その理由について考えてみます。
営業プロセスの標準化に役立つ
まずはじめに、The Model(ザ・モデル)の営業組織を採用することで、営業のルールが明確になります。ルールを定めると、営業組織、各担当者のそれぞれの役割が明確になり、各社のベストプラクティスで定められたルールに基づき活動をします。ルールに基づいて行動するため、正しい行動を行っているか判断がしやすく、修正が必要な場合はコーチングを迅速かつ適切に行えます。結果として、正しい行動を各メンバーが取れるようになり、属人性に依存する営業活動が激減します。また、誰もが皆ベストプラクティスに則った正しい営業活動が行えるため、結果が出やすく、かつ再現性が高まります。
標準化が行われず、属人的なスタイルで営業活動が行われた場合はどうなるでしょうか。
- 経験やナレッジがシェアされない
- 優秀な営業であっても、その人の真似ができない、参考にならない、人が育たない
- それぞれがバラバラなスタイルのため、営業個人への依存度が上がる
- 優秀な営業が辞めた場合、一気に組織が弱体化する
- 型がないからルール化できず、再現性がない
- 組織体制の変更や人事異動があっても、キャッチアップできない
一方で、営業プロセスを標準化するとどうなるでしょうか。
- 経験やナレッジがシェアできるので、他の営業メンバーの参考になる
- 営業スタイルが統一されているので真似しやすく、営業組織が強化される
- 営業プロセスが明確なため、育成やイネーブルメントがしやすい
- 再現性が高い営業活動が行える
- 個人への依存度が低下し、急にメンバーが退職しても弱体化しにくくなる
- 育成方針が明確なため、人事異動や組織変更を実行しやすい
営業効率の向上を期待できる
The Model型の組織を実現することで、マーケティングやインサイドセールスが活発に動くようになり、そして、リードの創出からナーチャリングを行った上で、営業にパスを出るようになります。
したがってフィールドセルスは、提案や受注など、重要な業務だけに集中できるようになり、営業効率が向上します。営業プロセスにおいても、再現性の高い方法が定義されているため、自社のソリューションが最も受注しやすくなるよう、最適化できるようになります。
分業制を敷くことでメンバーの育成がしやすい
明確に各部門やメンバーに行動の指針を設け、分業制を敷くことで行動パターンが明確になります。部門内のベストプラクティスに基づき、メンバー全員が皆同じように成功へ向けた行動が取れるようになるためです。例えると、金太郎飴のように、成功する確率の高いメンバーを大量生産するイメージです。画一的に聞こえますが、成功するためのベストプラクティスに基づいた行動を、最短距離でメンバー全員が取れるようになれば、必ず組織は強くなります。
また、分業制で同じような成功モデルに基づいた行動パターンが決まっていれば、再現性を持たせながらメンバーを育成できるようになります。
例えば、顧客へのアプローチ方法、質問が来た時の対応方法、電話やメールがつながりやすい時間帯の共有、トークスクリプトなど、標準化できる行動はできるだけ標準化してしまいましょう。そして、繰り返しマシーンのように行動を繰り返し、成功パターンを覚えさせメンバーを育成することができます。
The Model(ザ・モデル)の効果を最大限にするための3つのポイント
導入の目的を明確にする
目的のない行動は結果につながりません。それは組織であれば尚更です。
皆さんの組織にThe Model(ザ・モデル)の営業組織を採用する場合、明確な導入理由が必要です。明確な採用理由がないにもかかわらず、高度なThe Model(ザ・モデル)の営業組織を採用するという決断は極めて危険であり、失敗するリスクも高くお勧めできません。
導入の目的を明確にするためには、The Model(ザ・モデル)の営業組織をしっかりと理解し、どういった組織であれば効果を発揮するのか、導入に必要な条件や体制についても事前に情報を拾っておく必要があります。
できれば導入の成功事例や、失敗事例、成功する企業の共通点を踏まえ、その上で明確に理由がある場合、自社に導入すべきと判断するといいでしょう。リスクを恐れるあまり、石橋を叩き過ぎて何も決断できない組織は問題です。しかし、決して平坦ではないチャレンジをしようとする場合、注意深くなることは悪いことではありません。
したがって、導入の対象を理解し、導入目的を明確にした上で採用の可否を決断することをお勧めします。
部門間連携の強化(部門間に抜け落ちる業務を防ぐ)
本来はThe Model(ザ・モデル)の営業組織を採用する目的は、営業体制を改善するためです。しかし、分業制を敷くことで、部門間の断絶が生じる可能性もあります。これは、業務を明確に分けることで、部門間でどうしても抜け落ちる業務が生じてしまうためです。
組織の構造上、各部門のミッションを明確にしても、部門間にまたがる業務ができてしまい、どちらがボールを持つべきかというボールの投げ合いのような事象が起こります。
この部門間に抜け落ちる業務を防ぐためには、部門間の連携を強化することが重要です。部門間で抜け落ちそうな業務が何かを明確に把握し、抜け落ちないようにするためには誰が対応するのかのルールを作っておくと良いでしょう。また、部門間の橋渡し業務を担当する人をアサインし、どちらの業務かお見合いになるといった状況を回避するなど、工夫が必要です。
部門間で業務を分けることで、様々なメリットがあることはお伝えしました。しかし、少なからずデメリットがあることも理解した上で、そのデメリットがクリティカルにならないようカバーするプロセスを敷いておくことも忘れないようにしましょう。
データを毎日記録し、ため続ける
The Model(ザ・モデル)の営業組織を成功させるためには、データを毎日とり続け、分析しながら定点観測を行い、定期的に修正を加えPDCAを回す必要があります。営業活動を分業制にするということは、改善ポイントを明確にし、修正を速やかに行えるようにするという目的があります。
しかし、改善を繰り返すためには大前提としてデータがなければなりません。そして、データを取るためには個人個人が確実に日々の業務を記録し続ける必要があります。データを記録し貯めておかないと、過去の良い結果や悪い結果を振り返ることができず、成功を繰り返す再現性の高いパターンを作ることができないからです。
The Model(ザ・モデル)の営業組織は高度な営業体制です。地道な営業活動の記録と、毎日のオペレーション業務の改善で成り立っています。効果が期待できる活動データは一朝一夕では身に付かず、地道な日々の業務が積み重なって改善されていくのです。
面倒臭い道のりであることは百も承知ですが、その先に得られるベネフィットを見据え、できるだけ継続したオペレーション業務が求められるでしょう。
まとめ:The Model(ザ・モデル)型の営業組織を必ず成功させるために
本記事では、SaaS時代の必読本『The Model(ザ・モデル)』をテーマに、情報を共有いたしました。変わりゆく環境に対応しながら、営業組織も変わっていかなければなりません。
The Model(ザ・モデル)には、現在のBtoBビジネスを生き抜くための、エッセンスや考え方が散りばめられており、本を通して多くの学びがあるはずです。
さらに、実際に本を通してThe Model(ザ・モデル)型の営業組織を立ち上げたいと思った方々も少なからずいらっしゃると思います。現在のビジネスを勝ち抜くために必要な要素が多く含まれており、目指す価値はあるでしょう。
しかし実際に、The Model(ザ・モデル)型の営業組織を立ち上げるのは簡単ではありません。目的を明確化し、自社ビジネスを俯瞰し、KPIを設定し、運用ルールを作るなど、やるべきことは山ほどあります。
実際に頭で考えることと、行動するのでは雲泥の差があります。The Model(ザ・モデル)型の営業組織を成功させるためには、外部のコンサルに相談することを強くお勧めします。今や、営業も科学的なアプローチが求められています。
自社に知見がなければ、スポットでもいいので外部のコンサルに相談し、現代に求められるThe Model(ザ・モデル)型の営業組織の実現を目指しましょう。
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